[Nature Neuroscience] 鼻は知っている

 ワイツマン科学研究所(イスラエル)のHadas Lapid氏らは、鼻に測定器を装着して世界各国で共通する快・不快のにおいを単独でかがせる工夫を凝らすことにした。その後、様々なにおいに対する臭覚上皮の電気信号活動を評価した。その結果、臭覚上皮には、においの快・不快を判別にかかわる領域が存在し、特定分子を感知する能力が高い部分が存在することがわかった。
 
 今回の著者らの検討は、人の臭覚上皮は独自に臭覚検知システムを所有する可能性を示すものである。今回の結果は、従来の考え方(脳が臭覚受容体の結合パターンを判別して臭覚情報を処理している)とはことなる点で、著者らは驚きをもって受け止めているようだ。

→ Nature Neuroscience 14, 1455?1461 (2011)
Neural activity at the human olfactory epithelium reflects olfactory perception
http://www.nature.com/neuro/journal/v14/n11/abs/nn.2926.html
 
 しかし、門外漢の僕にとっては、それほど不思議に感じない。味覚受容体の研究では、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つが基本味が知られているように、臭覚受容体でもいくつかの臭覚感受領域に分かれていたとしても不思議はないかもしれない。
 
 味覚と違ってネズミの鼻には1200種類以上の臭覚受容体が存在し、個別の受容体判別は困難を極めるものであったが、人の臭覚受容体はネズミの3分の1程度と少ないため、個別の匂いに反応するニューロンを検出するのに利用しやすい。鼻の能力が劣る人間が、動物の臭覚研究のよい材料になるというのも主従逆転で面白い。
 
 
  かつて、知の冒険において「臭神経はにおいの方向を感じている」という記事を取り上げたことがあった。
 
 なぜ、鼻の穴は二つある?ってな疑問を、それまで疑問に思わなかった自分の無自覚に
 穴があったら入りたいような恥ずかしさをおぼえたものである。
 
 よく、隠し事などを鋭く感じ取ったり、においを鋭くかぎ分けることを称して、「鼻が利く」ということがある。
 では、この鼻が利くとはどういうことなのだろうか?
 
 これまで、臭いを感じ取るのは脳だと思われてきたかもしれないが、もしかしたら鼻そのものが「臭い」あるいは「匂い」を検知し、自己判断する能力を持つかもしれない。 
 
 → 鼻力_危険の臭いを感じる細胞 
 
 → [Science] 悲しみの涙は、男の感情を揺さぶる物質を含む
 
 隠し事を鋭く感じ取るには、脳が重要な役割をするのかもしれないが、
 好き嫌いの「におい」は、脳以前で処理済みなのかもしれない。