[Science] 鼻力_危険の臭いを感じる細胞

ムムム!
なにやら怪しい「におい」がするぞ。

このとき、我々は本当に臭いを感じているのだろうか?

植物や昆虫において警告ホルモンが利用されているが、人間が危険な臭いを鼻で感じているかどうかはわからない。しかし、今回、哺乳類でも警告ホルモンを鼻で感知していることが報告された。

スイスのLausanne大学で毒性薬理学を研究しているBrechbuhl Jらは、1973年に発見されて以降、その機能がなんなのか議論されていた「Grueneberg神経節細胞」の機能として、警告フェロモンを感じ取る働きがあることを突き止め、2008年の8月22日付けのScienceに報告した。

研究者らは、Grueneberg神経節(CG)細胞を欠損したマウスを作り、他のマウスから発せられた警告フェロモンに対する反応を正常マウスと比較した。

正常マウスは仲間の危険信号を察知したとき、ケージ内で動きを止め、端っこへ逃げ込み、固まって身動きしなくなった。これに対し、欠損マウスでは、仲間が危険にあっていても危険信号に気が付かず、相変わらず動き回っていた。

この実験において、CG細胞を欠損したマウスであっても寝床の下に隠したクッキーを嗅ぎ出すことはできたため、臭覚系は正常に働いていると考えられた。また、研究者らは電子顕微鏡を用いて神経節の形態を調べ、このCGニューロンは繊毛をまとってグリア細胞に覆われ、他の臭覚ニューロンと同様の特徴を備えていることを見出した。

PMID: 18719286 > Science. 2008 Aug 22;321(5892):1092-5.
Grueneberg ganglion cells mediate alarm pheromone detection in mice.
EurekALert! > The nose’s danger detector
NewYork TIMEs > How the Nose Sniffs Danger in the Air

我々は時に「胡散臭い」「きな臭い」などという言葉を使うことがある。何かの危険を感じるというのは、脳のどこかが反応しているはずだ。

じゃあ、何処で我々は危険を感じているのだろうか?

高齢者の認知機能が低下する前に臭覚が低下するという話もあるが、鼻力(はなぢから)というのはなかなか侮れない高機能装置によって成り立っているのかもしれない。

「鼻が利く」などと表現することもあるが、これもまた、鼻力なのかもしれない。
警告信号を察知する能力同様、未来を察知する「鼻力」もほしいものである。

哺乳類(マウス)で危険を察知する装置がみつかったことは、鼻力の利用が警報装置として使える可能性にも繋がるのかもしれない。

そんなことを考えた。