[Cell Rep] 脳内の整理整頓_アルツハイマー病発症に細胞の自食が関与

通常、細胞内に作られたAβは、自食機能により速やかに分解・リサイクルされ、生態の恒常性が維持すると考えられている。今回、理化学研究所の研究チームは、自食機能の欠失がアルツハイマー病発症に影響しているだろうと考え、自食とアルツハイマー病の関連を調べた。

自食能力

自食能力に関わる遺伝子を欠損させた「自食能力欠損マウス」と、
Aβを過剰に蓄積させた「アルツハイマー病モデルマウス」
を掛け合わせた「掛け合わせマウス」を作製し、
“自食能力がなく、かつAβを過剰に蓄積しているマウス”を用意した。

ところが、自食能力の欠損がアミロイド斑形成に関わるという予想とは異なり、
意外なことに「掛け合わせマウス」のアミロイド斑の蓄積量は極端に少なく、アルツハイマー病モデルマウスの70分の1しかなかった。

この結果の解釈は、細胞内にAβが蓄積して細胞外へ排泄されないために脳内のアミロイド斑の蓄積量が減少したことを示すと理解され、細胞の自食には、Aβの分解・リサイクルだけでなくAβを細胞外へ排出する機能もあると考えられる。

また、掛け合わせマウスでは、飼育を続けることで、アミロイドの蓄積が激減しているにもかかわらず神経細胞死による脳の萎縮や記憶障害などアルツハイマー病に類似の症状が現れ、細胞内のAβに強力な毒性があることが示唆された。

PMID: 24095740
Aβ secretion and plaque formation depend on autophagy.
Nilsson P, Loganathan K, Sekiguchi M, Matsuba Y, Hui K, Tsubuki S, Tanaka M, Iwata N, Saito T, Saido TC.
Cell Rep. 2013 Oct 17;5(1):61-9. doi: 10.1016/j.celrep.2013.08.042.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24095740

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アミロイドβペプチドの蓄積がアルツハイマー病の原因だと言われ、
アミロイド蓄積を減らす薬剤の開発が進められてきたが、
次々に開発失敗の知らせが届き、一部にはアミロイドβの重要性を疑う声も出始めていた。

ところが、ここにあらためてアミロイドβの重要な役割を示す報告が登場したわけである。
今回の研究により、自食の新機能が見出されたことで、
アルツハイマー病発症のメカニズムを解明する足がかりになることが期待される。