あなた、ちゃんと飲まなきゃ死にますよ!
はい、わかっているんですけど・・・・・
服薬遵守という言葉を(本サイトのメルマガ:コンプライアンスとアドヒランス)で取り上げたばかりのところへ、ポンと目に飛び込んできたのが「インテリドラッグ(IntelliDrug)」という言葉であった。
Biotoday経由で知ったこのインテリドラッグは、本当に知的である。この薬は歯型の器機に薬物を充填させ、必要に応じて薬が溶出されるように設計されたものである。
IntelliDrugのホームページによると、口から出し入れできる装置、かつ、遠隔操作可能なドラッグデリバリーシステムを目指しIntelliDrugプロジェクトが進んでいるとのこと。欧州委員会のサポートをうけているそうだ。この装置はマイクロプロセッサーやバッテリー、ポンプ、薬剤溶出を調節する弁とバルブがが組み込まれた歯型のもので、必要な薬液が口の中に設置した装置から放出されると、薬剤は唾液と混ざり、頬や口内の粘膜から血液中に吸収される。そして、薬物中毒や慢性疾患の患者に利用できるのだ。
このIntelliDrugを用いた解決策は、次のようなメリットをもたらす。
・正確に決められた量の薬剤を投与できること
・薬剤投与の開始も終了も正確に調節できること
・用法用量を守った服薬を繰り返し行えること
・薬の必要に応じて簡単に口から装置を取り出すことができるため、患者の健康状態に合わせて使えること
▼【AP通信】Engineers Building Drug Filled Tooth
▼【INTELLIDRUG】About the project
本当は薬を飲んだほうがよいとわかっているのに、たとえば1日3回の薬だと昼に飲み忘れてしまうことが多いし、喉が狭くなっているお年寄りに大きなカプセルの薬を2剤も3剤も飲めと言っても、なかなか継続して飲むのが難しいことだってあるだろう。
また、点滴静注すればよい薬の場合、毎日のように注射のためにベッドで1時間も動けないなら、それは大きな苦痛を伴うことだろう。そこで、薬物を充填させた装置を体内に埋め込み徐々に放出させようという試みや、パッチ剤として皮膚から薬物を吸収させようという試みがすでに実現され、広く応用されていた。しかし、それでも飲み忘れや服薬の面倒は残っていた。
体内埋め込み型のインプラントだと、装置の出し入れが必要なときに大掛かりな手術が必要だったりして何かと面倒である。経口的にアクセス可能かつ、遠隔操作で投薬可能なドラッグデリバリーシステムは、きっと患者救済の大きな手段となることだろう。
■ 24時間体制の治療?
この装置を使うことで、必要な薬剤を必要なときに携帯電話やパソコンなどをつかった遠隔操作で投与することができるようになる。そうなると、体内の検査マーカーをモニタリングし、それを遠隔地のデータモニターセンターに定期的に送信し、その結果とあわせて治療を管理しようという発想も出てくることだろう。ビル管理会社が24時間セキュリティ対策を売り物にするみたいに、患者管理の24時間管理サービスだって登場してくるのかもしれない。
■ 心筋梗塞や脳梗塞の予防?
もし、心筋梗塞の早期マーカーといわれるトロポニンや体内での血小板凝集マーカーの上昇を感知しモニタリングできるシステムが実用可能なところまで進めば、心・血管疾患のリスクが高い人に対してあらかじめIntelliDrugを装着しておき、モニタリングシステムと組み合わせることでイベントの予防にもつながるかもしれない。
一方、物騒な発想も生まれてくるかもしれない。
■ 性犯罪抑止策?
孫悟空は三蔵法師から頭に「緊箍(きんこ)」と呼ばれる金の輪を装着され、悪いことをすると呪文により頭がグイグイ締め付けられたと言われている。一説によると、もともと猿である孫悟空はお盛んで、メス猿を見るたび興奮して交尾を繰り返すため、性器にワッカをつけて発情を抑えていたなんて話もあるようだ。
IntelliDrugと検査マーカーを組み合わせることで「性的異常者が性的興奮を覚えるたびに薬剤投与で沈静化させ、犯罪を未然に防ぐ」なんてことも考え出されていくことだろう。
この過程では、倫理的問題、社会的問題が様々に議論されることだろうが、IntelliDrugは多くの可能性を秘めていて面白い。
http://intellidrug.com/