[Nature] 赤ちゃんも人助けはお好き

この人はよい人か?

誰かが何を意図して行動しているかを判断することは、社会でうまく立ち回る上で不可欠な能力であろう。大人は瞬時に相手が自分にとってよい人か害を及ぼす可能性のある人物かを見分けるものだが、このような判断能力はいつから備わっているのだろうか?

エール大学(米国)の研究者らがNatureの11月22日号に報告したところによると、生後半年の赤ちゃんは、すでに社会的「モラル」をもっている。

大人は行動や身体的特徴から相手の人が自分にとって害を及ぼす可能性のある人かどうかをすばやく判断しているが、この判定能力の個体発生学的起源と発達についてはよくわかっていなかった。

今回、研究者らは、生後6カ月と10カ月の乳児を対象に、顔に似せたおもちゃが山に登ろうとするのを助けて押し上げるキャラクターと、山登りを邪魔するキャラクターを見せたあと、どちらのキャラクターを選ぶか試す実験を行った。その結果、言葉を使えるようになる前の生後6ヵ月の赤ちゃんにも、全く関係ない第三者が目的を達成しようとするのを手伝う人物に好感を寄せ、逆に第三者が目的達成するのを妨害する人物を避けようとする能力が備わっていることがわかった。

こうした知見は、乳児にも大人に似た社会的評価の原型のようなものが備わっており、道徳的思考や行動の基盤となっている可能性を示すものである。

【PMID: 18033298】Nature. 2007 Nov 22;450(7169):557-559.
Social evaluation by preverbal infants.

最近の赤ちゃん学研究では、言葉を話す前の乳幼児であっても今まで考えられていたよりも多くの情報を認識し判断していることがわかってきているようである。

4歳になる息子も、ボケーーーーーーーーーっとしているようで時に心配になるが、聞いていないようでいて実に詳細に両親の言動を観察しており、思いもかけないことをしっかり記憶していてびっくりすることもあったりする。

人は会話だけでなく相手の表情やしぐさなど、言語以外の多くの情報により他人を判断しており、言語は価値判断のごく一部でしかないとも言われている。

小さな赤ちゃんにも他人の意図を判断する能力が備わっている可能性があり、こうした価値判断を行う能力は、ヒトがヒトたる所以なのかもしれない(そうでないかもしれない)と思ったりもするのであった。

同じ事をサルやチンパンジーで行ったらどういう結果になるのだろうか?ヒトと同じ結果がえられるのだろうか?

そんなことを考えた。