[Nature] 萎縮した脳の記憶を回復する方法

一度消しゴムで消した文字を回復させることは出来ない。
同じように、脳の中の消しゴムで消された記憶を戻すことは今まで難しかった。しかし、記憶力を増したり、アルツハイマー病などで失われた記憶を回復させる薬の発見という夢への期待が膨らんできたようである。

:idea: Massachusetts Institute of TechnologyのAndre Fischerらは、重度神経変性の動物モデル(CK-p25Tgマウス)を用いた研究から学習および記憶の回復はクロマチンの再編成と関連することを突き止め、Natureの5月10日号に報告した。

:?: 彼らは、マウスの生活環境を興味のもてる環境にすること(環境エンリッチメント)やヒストン・デアセチラーゼ(HDAC)阻害剤の投与により細胞核内での転写を変化させ、記憶形成を観察した。

その結果、p25マウスには重度の脳萎縮があるにもかかわらず、記憶増進が観察され、記憶回復には既存のニューロンネットワークの再構成を伴うことを突き止めた。

記憶回復とクロマチン修飾は相関し、HDAC阻害剤によりヒストンのアセチル化を促進することで樹状突起の発芽、シナプス数の増加、および学習行動と長期記憶呼び出しの回復が誘導されたのである。

Nature 447, 178-182 (10 May 2007) 
Recovery of learning and memory is associated with chromatin remodelling

8-O こうしたデータは、ヒストン・デアセチラーゼ阻害によりクロマチンの再変を起こせば、学習や記憶障害を伴う神経変性疾患に適した治療が開発可能であることを示したものとして興味深い。

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