[Nature] 脳の中の掃除係はどうやってゴミを食べるのか?

頭の中のお掃除屋さんはどうやってゴミを見つけているんだろう?

:idea: これまで、脳の中でATPがミクログリアの走化性に関わっていることはわかっていたが、どのようにしてミクログリアが活性化され、脳内で不要になった細胞断片を処理しているかはよくわかっていなかった。Nature4月26日号にNational Institute of Health SciencesのKoizumi Sらが報告したところによると脳内に住むお掃除屋さん、ミクログリアは、これまでに知られていなかったメカニズムで貧食作用を発揮していることがわかったそうだ。

 

ミクログリアは脳にある免疫細胞で、周囲の細胞が損傷を受けるとそこへ突起を伸ばして駆けつけ、損傷を受けた細胞を貧食、除去し、不要物の除去という脳機能の維持に不可欠な役割を担っている。

:?: 今回、Koizumiらは、けいれん誘発物質であるカイニン酸をラット腹腔内に投与して神経細胞死を引き起こしたところ、ミクログリアにP2Y6受容体が発現していることを免疫組織学的に確認した。そして、損傷を受けた細胞から細胞外に拡散する分子であるUDP(P2Y6 受容体の選択的アゴニストでもある)をつかってin vitroでミクログリアを刺激すると、ミクログリアの貪食能は飛躍的に増強されることも見出した。このとき、貧食能増強とともに細胞内カルシウムの上昇も確認されている。

さらに、同氏らは、in vivoにおいてもカイニン酸投与によって海馬CA1領域、CA3領域でニューロンの細胞死がおこり、そこでは活性化されたミクログリアと共にP2Y6 受容体mRNAの増加を確認した。

今回の研究によって、液性因子であるUDPがP2Y6受容体を介して貧食反応を仲介することがわかった。このことは、ミクログリアにあるP2プリン受容体に今まで知られていなかった新しい病態生理学的機能が存在することを意味するものである。

【PubMed】Nature. 2007 Apr 26;446(7139):1091-5. 
UDP acting at P2Y6 receptors is a mediator of microglial phagocytosis.
九州大の広報ページ

8-O このゴールデンウィークは、仕事の書類で散らかっていた部屋をやっと片付けることができた。ゴミなのかゴミでないのかもわからない書類の山を片付けたことでなんだか気分がすっきりして、俄然、仕事もはかどった。ゴミを片付けることは、仕事をスムーズに行うためにも必要なことである。

脳のなかも同じで、ゴミばかりたまれば機能不全を起こしてしまうが、しっかり掃除係が働いているから恒常性が維持されている。

掃除係がどのようにして働いているかがわかってきたことから、さらに研究を進めることで、上記の研究成果がアルツハイマー病などの脳機能維持、改善に障害のある疾患に有効な治療手段を探る取っ掛かりになるかもしれない。

常日頃からの整理整頓は大切である。そんなことを改めて思うのだった。