もうだめだ!
癌を宣告されて意気消沈し、宣告された余命期間もまっとうできずに亡くなるヒトがいる。さぞ、癌の宣告がストレスになったことであろう。病は気持ちからくるものであり、ストレスは癌と関連するとも言われている。
ところが、「ストレスがどういうメカニズムで癌と関連するの?」という問いかけに対して明確な答えはこれまでに出されていなかった。
今回、Wake Forest大学(米国)のGeorge Kulik博士は、前立腺癌と乳がん細胞を培養してそこにエピネフリン(ストレスホルモン)を加えてみた。すると、細胞死を引き起こすBADと呼ばれるたんぱく質の活性が低下したのであった。本結果は「Journal of Biological Chemistry」誌オンライン版に掲載された。
博士らによると「こうしたデータは、情緒的ストレスが癌の進展を早め、癌の治療効果を減らしてしまうかもしれないことを意味している」。
カナダからの報告によれば、高血圧治療のために少なくとも4年以上βブロッカーを投与していた患者さんで前立腺癌のリスクが18%低下したという報告がある。エピネフリンを抑えるβブロッカーが前立腺癌のリスクを低下したことは、Kulik博士らの研究結果を臨床的に裏付けるものである。
また、前立腺摘出術後の気分障害はしばしばストレスホルモン上昇とも関連しているとの話もある。この報告は、ホルモンレベルを直接評価したものではないが、ストレスホルモンは前立腺癌で重要な役割を担っていることを示すものでもある。
▼【Doctor’s Guide】
▼【Wake Forest University Baptist Medical Center】
Stress May Help Cancer Cells Resist Treatment, Research Shows
ストレスや笑いなどの感情は病状に大きな影響を与えると言われる。情緒ストレスがどのような分子メカニズムで生体へ影響を及ぼすかというテーマは、古くて新しいトピックであろう。