[JAMA Intern Med] COPD患者の治療介入による新血管イベントリスク

Nested case-control study

なんだそれは?

恥ずかしながら、これはどんな研究のことを言っているのかわからず、ちょっと調べてみた。
どうやら次のような疫学研究をいうらしい。→ Wikipedia

ある集団を現在から未来に向けて追跡し、ある事象が生じた群(case)を抽出し、同じ集団の中から条件にあった対照を選び出しコントロール群(マッチング)とします。そして後ろ向きにケースとコントロールを解析するのですが、母集団が明確である点が母集団が不明確な通常のケースコントロールスタディとは違う点になります。

■概念ツリー

研究技術 Investigative Technique
疫学的手法 Epidemiologic Method
疫学研究特性 Epidemiologic Study Characteristics
疫学研究 Epidemiologic Study
症例対照研究 Case-Control Study ←ココに該当
遡及研究 Retrospective Study

(via ライフサイエンス辞書)

さて、そんなネステッドケースコントロール研究によって、これまで指摘されてきた慢性閉塞性疾患(COPD)の患者における「長時間作用型吸入β刺激薬(LABA)や長時間作用型吸入抗コリン薬(LAMA)による心血管イベントリスクの上昇」があらためて確認されたようである。

トロント大学(カナダ)のAndrea Gershon氏が「JAMA Internal Medicine誌」に報告したところによると新規にLABA、LAMAを使用した患者は、使用開始後数週間の心血管イベントによる入院または救急受診のリスクが高まるため、新規処方後のフォローが必要だとのこと。

著者らは、カナダオンタリオ州のヘルスケアデータベース13000万人のデータをもとに66歳以上のCOPD確定例で、COPDに対する治療を2003年9月1日~20009年3月31日に受けた患者を抽出し、LABAもしくはLAMAの処方を受けた時点でコホート研究に組み入れた。

薬剤が処方されていなかった患者や、既に薬剤が使用継続されている患者は除外し、新規処方例のみを対象とした。

心血管イベントによる入院や救急受診を経験した53532名がケースとして抽出され、さらに、年齢、性別、COPD歴、心不全の有無と、入院歴(急性冠症候群、心不全、虚血性脳卒中、不整脈、急性呼吸器疾患による)がマッチするコントロールを、ケース1人当たり1人選出した結果、2万6628人が最終的に選び出された。

ケース群には糖尿病や高血圧、最近の入院または救急受診の履歴のある患者が多く、LABA使用群の調整オッズ比は1.31(95%信頼区間1.12-1.52、P<0.001)、LAMA使用群は1.14(1.01-1.28、P=0.03)であった。両薬剤間でのリスクに違いはなかった。

これらの薬剤を使用する際には、しっかり注意を怠らないことが大切だと著者らは述べている。

▼ Cardiovascular Safety of Inhaled Long-Acting Bronchodilators in Individuals With Chronic Obstructive Pulmonary Disease
JAMA Intern Med. 2013;():1-9. doi:10.1001/jamainternmed.2013.1016.
http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1689974

息もできない苦しい状態を救ってくれるなら、LABA,LAMAとも患者の福音になろうが、そのために心疾患でひっくり返るのもたまったものじゃない。とはいえ、ちゃんと分かった上で管理すれば、大事に至ることも防げると思われるため、こうした情報を把握して治療に当たることは大切なことだろう。