ノーベル生理学・医学賞2012を振り返る

京都大学では、ノーベル生理学・医学賞受賞のもととなった、山中伸弥教授の論文“Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors.”を京都大学学術情報リポジトリ「KURENAI」で公開しています。備忘録的にメモとして残しておきます。

▼PMID: 16904174
Takahashi K, Yamanaka S. Cell. 2006 Aug 25;126(4):663-76.
Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors.

京都大学学術情報リポジトリ
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/159777
「※今回の論文公開につきましては、Cell Pressより格別のご配慮をいただきました。」
ということですので、Cellの会員になっていなくても論文を入手することができます。

ーーーーーーーーーーーーーーー

日本中を沸かせたノーベル生理学・医学賞が発表されたのは、2012年10月8日(月曜日)18時30分(日本時間)のことでした。山中伸弥 iPS細胞研究所長・教授(物質-細胞統合システム拠点 連携主任研究者)の受賞は、生理学・医学賞としては1987年の利根川進博士以来25年ぶりのことです。京都大学では、特設ページを作って、この喜ばしい出来事を祝しています。

京都大学特設ページ
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2012/121008_1.htm

ノーベル財団による受賞理由をもとに今回の受賞理由を簡単にまとめると下記のとおりです。

nobel-2012-iPS

20世紀前半には、分化した細胞は永久に分化した状態のままであり、ほかの種類の細胞に分化できる(多能性幹細胞の)状態には戻れないと考えられていましたが、1962年のGurdon博士と2006年の山中博士の研究によって、細胞分化の理解に転換がもたらされました。

Gurdon博士は、カエルの腸の上皮細胞から取った核を除核した卵に移植し、完全な機能を持つオタマジャクシを生み出し得ることを示しました。この研究により、細胞の分化が一方向へだけ向かうものではなく、可逆性をもったものであることが示されました。
しかし、哺乳類での初期化現象はなかなか再現できず、また、完全に分化した細胞を完全に初期化し得るのかという点は、謎として残っていました。

iPS細胞(人工多能性幹細胞)の発見は、たった4つの転写因子を分化した細胞に導入するだけで、細胞が初期化することを示し、世界を驚愕させたのでした。