[Am J Respir Crit Care Med] 尿NOのテストは肺損傷の予後を教えてくれる

おしっこで占いだって?
占いなんていわず、予後診断と言ってほしいものだね
で、その予後診断ってどんなものなの?
急性肺損傷(ALI)の予後を予測できるかも知れないってお話だよ

:idea: 急性肺損傷(ALI;acute lung injury)は予後の非常に悪い急性呼吸窮迫症候群(ARDS;acute respiratory distress syndrome)として知られる重度の肺損傷を少しでも早くから治療しようとして出てきた疾患概念である。予後を評価する適切な指標に乏しかったこの疾患において、酸化ストレスのマーカーとして知られる窒素酸化物(NO)が予後の指標になるかもしれないとの報告があった。

:?: カリフォルニア大学のMcClintock DEらは、尿中NO高値と生存率の改善に相関があり、尿中NOが高い人では臓器不全率は低く、人工呼吸器を必要としない日数が長い(呼吸状態が良好である)ことを呼吸器の専門誌「Am J Respir Crit Care Med」の2月号に報告した。

彼らは、誤嚥(ごえん;誤って食べ物などを気管に入れてしまうこと)や敗血症(発熱や呼吸増加など全身の炎症反応を呈し、感染を伴う状態)により急性肺損傷をきたした患者566名(平均52歳、男性57%)を対象に多施設臨床試験を実施した。調査期間3日間で死亡したのは62名で、試験開始時にNOが高かった患者の死亡率は低かった(オッズ比:0.4)。

また、人工呼吸器関連肺炎(人工呼吸で肺に高い圧力をかけることで生じる肺の損傷)についても検討し、換気量12 ml/kgの被験者よりも6 ml/kgの被験者の方が3日目における尿中NOは高いことを報告した。

これらの結果は、研究者らが当初思い描いた仮説とは反対のものであったが、彼らは、NOが微小循環を改善し、肺組織に対して保護的に働くのではないかと考察している。

【Health Day】
Urine Test Helps Predict Lung Injury Outcome
【PubMed】Am J Respir Crit Care Med. 2007 Feb 1;175(3):256-62.
Higher urine nitric oxide is associated with improved outcomes in patients with acute lung injury.

8-O たかがこれだけのデータでNOが予後の診断に役立つかもしれないというのは言い過ぎのような気もするし、今回の成績からNOを治療に役立てようと考えるのもあまり納得のいく話ではないように思う。しかし、尿中NOと患者予後とに関連が深いという事実は、急性肺損傷の病態理解の一助になると思われる。