先生、根元が痛いんです
むむむ・・・、屈曲がひどいが、挿入に問題は?
む、無理なんです
そうですか、でも大丈夫、保存的に治療しましょう、様子を見ている間に痛みがひくこともありますよ
こんな会話があったとしたら、それは、もしかしたら90年代の善意ある医師とペロニー病を患った男性患者のものだったかもしれない。しかし、ペロニー病患者の自然経過がわかった今、成り行きまかせの治療はもう薦められない。
泌尿器専門誌Urologyに報告された珍しいと思われていた疾患のことが、臨床医を念頭に置いた科学誌、Nat Clin Pract の2006年12月号に取り上げられていた。
ペロニー病(形成性陰茎硬化症)とは、陰茎白膜の線維性疾患であり、一般的には初期に陰茎の痛みを感じはじめ、その後、線維状のプラーク形成、勃起障害を生じ、生活の質に大きな影響を与える病気である。今から250年ほどまえに初めて報告されたそうだが、当時は稀な疾患だと考えられていた。
治療は、患者を安心させることが大切だと1990年代頃まで考えられており、保存的治療が行われていたそうである。しかし、男性の3.2~8.9%(え~!多い!!)にみられる一般的な疾患であり、初診時から積極的に治療すべきだという考え方に変わってきている。多くは60歳代に発症するそうだ。
Urologyに報告された研究成果によると、ペイロニー病に関連する症状(陰茎の小瘤など)に気が付いてから半年以内に診察を受けた男性を対象に、無治療のまま1年間観察した患者の勃起機能と合併症の罹患率を調べたところ、以下のようなことがわかったそうである。
・試験参加者246名(平均52歳、罹病期間3.5ヵ月)の主な異常は屈曲で、その平均屈曲度は42±22度だった。
・追跡期間におけるペロニー病の持続期間は18±7ヵ月で、弛緩した陰茎を伸ばしたときの長さは、12.2cmから11.4cmまで減少していた。
・この間に89%の患者は、痛みがなくなっており、屈曲が改善していたのは12%で、40%は不変、48%は悪化していた。
・挿入困難または、不可能であると答えた患者も、追跡期間を通じて増加していた。
かつて1970年代に「ゆっくりとした回復がみられるため患者を安心させたらよい」という考え方をしていたのは誤りであり、放置しておくことで病状は進行し、ペニスは短くなることが明らかとなった。
▼【PubMed】J Urol. 2006 Jun;175(6):2115-8; discussion 2118.
An analysis of the natural history of Peyronie’s disease.
▼【PubMed】Comment in: Nat Clin Pract Urol. 2006 Dec;3(12):634-5.
Persistent penile abnormalities in men with Peyronie’s disease.
へえ~!
こんな病気を知らなかったし、なんといっても、随分と罹患率が高いことに驚いた。糖尿病や高血圧、脂質異常がさらに症状悪化につながるようである。また、進行性であるというところが、ちょっと衝撃的である。治療としては、ビタミンE投与や病巣内治療が試みられる。
以下のような質問も患者さんからは寄せられているようだが、答えは、時代が違えば、異なったことだろう。
陰茎が勃起したとき右に曲がる
【質問】 七十歳の男性です。前立腺(せん)肥大症のため、四年前に内視鏡手術を受けました。その後遺症なのか、三カ月ほどたってから、勃(ぼっ)起したときに陰茎が少し右上に曲がるようになりました。だんだんひどくなり、今では醜いぐらいに曲がってしまい、夫婦生活もないまま過ごしています。以前は、勃起しても、どちらにも曲がる柔軟性がありましたが、今は痛くて反対側へ曲がりません。前立腺の手術でこんな後遺症が出るのですか。手術を受けたほとんどの人が悩んでいるのではないかと、思い切って相談することにしました。もう痛い目はしたくありません。治療法はあるのでしょうか。
▼ 徳島医師会:http://www.topics.or.jp/rensai/kenkou/98-2000/200910soudan.html
なかなか切実な問題なのか、どうなのか?