[Nature] 赤ワインの秘密_産地はどこがいい?

「ワインはいかがいたしましょうか?」
「そうだね・・・、健康のためにも赤ワインがいいね」
「でしたら、イタリアのサルジニア地方のものなどいかがでしょうか」
「ほほ~、それはどうして?」

ワインの名ソムリエならば、Nature11月30日号に掲載された報告は、それほど驚くべきことでもないのかもしれない(そうでないかもしれない)が、話のネタに知っていて損はないだろう。あるいは、もうすでに常識なのだろうか?

 

赤ワインの適度な摂取は、心血管疾患のリスクを下げると言われており、先日の「知の冒険」でもその成分であるリスベラトロールが長寿につながる変化をもたらすという報告を取り上げた。しかし、赤ワインには多くの成分が含まれており、リスベラトロールだけですべてを説明するには無理がある。赤ワインの秘密はもっとたくさんあるようだ。

赤ワインを飲むなら伝統手法の赤ワインを!
Nature11月30日号にCorder Rらが報告したところによると、赤ワインの中に含まれるプロシアニジン(procyanidin)には、血管内皮細胞の保護効果があり、こうした血管内皮保護物質の存在が、赤ワインを定期的に摂取すると心血管疾患のリスクを低下させることにつながっている可能性があるそうだ。

そして、南西フランスやイタリアのサルジニア地方で作られている伝統的な醸造法による赤ワインにプロシアニジンが多く含まれ、実際、これらの地域は長寿でも有名な地域なのだそうだ。

【BBC】Red wine health locations found
【Nature】Nature. 2006 Nov 30;444(7119):566.
Oenology: red wine procyanidins and vascular health.
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ワインに限らず、普及して簡便な製法が追求されていくと、健康によいとされた食品も、本来の良さだったものが失われていくことがある。特に発酵食品において時間をかける醸造という操作は、化学的には真似して作り出しがたい「何か」を作ると思われる。

昨年、サントリーの研究所が興味深い報告を出していたのを思い出す。


ウイスキーの適量飲酒が糖尿病やその合併症の発症を予防する可能性を検証する目的で始められました。昨年の日本糖尿病合併症学会で、ウイスキーが糖尿病合併症の発症を加速・増悪させるアルドース還元酵素活性を抑制する作用を持ち、その作用はお茶や他の種類のお酒に比べて強いこと、ウイスキーの樽熟成期間が長いほど作用が増加することを明らかにしました。

【サントリー】ニュースリリース2005年6月

ここで、興味深いと感じたことは二つある。一つはウィスキーに糖尿病合併症の予防効果があるかもしれないこととその主成分、もう一つはその効果がウィスキーの熟成期間が長いほど増加するということである。

時間というのは、有形無形の様々な変化をもたらすものである。その貴重な時間を日々、大切にしたいものである。

そんなことを考えた。