「頭の中の消しゴムって何?」
「老人斑といってアルツハイマー病のヒトの脳にあるんだよ」
「それ、どうやって確認するの?」
ここでいう、「消しゴム」とは、大脳皮質領域に蓄積し、軽度認知機能障害の原因になっているといわれているたんぱく質、βアミロイドやタウ蛋白のことである。これまで、生きているヒトの脳で老人斑の蓄積を確認する方法はなく、アルツハイマー病研究の障壁になっていた。NEJMの12月21日号にGW Smallらは新しい画像診断技術を報告した。
Smallらは、記憶障害があると自己申告し、神経学的・精神医学的評価を終えたボランディア83名を対象に、認知機能検査を実施した。そして、認知機能検査の結果に基づき、25名をアルツハイマー病、28名を軽度認知機能障害、30名を認知機能障害なし(健常対照)と評価した。
次に、彼らは、2-(1-{6-[(2-[F-18]fluoroethyl)(methyl)amino]-2-naphthyl}ethylidene)malononitrile (FDDNP)という老人斑や神経原線維に結合する分子を投与し、その後PETスキャンすることで、頭を開けずにアミロイド蛋白による老人斑やタウ蛋白による神経原線維変化を確認しょうと試みた。つまり、頭の中の「消しゴム」を頭を開けずに診ようというのだ。
FDDP-PETの成績(側頭部、頭頂部、後部帯状回、前頭部に対する検出値の総合評価)を群間比較したところ、検出された値は、アルツハイマー患者で最も高く、軽度認知機能障害では、アルツハイマー病よりも低値だが、健常対照よりも高値を示すという結果であった。
このような手法は、大脳におけるβアミロイドやタウ蛋白の分布パターンを調べる手法として有用だと考えられる。
▼【PubMed】N Engl J Med. 2006 Dec 21;355(25):2652-63.
PET of brain amyloid and tau in mild cognitive impairment.
▼【PubMed】N Engl J Med. 2006 Dec 21;355(25):2697-8.
The Persistence of Memory
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非侵襲的に脳の中の蛋白蓄積を評価できるというのは、実にすごいことだと思う。こうした手法が研究されていることは、1年ほど前にFDAニュースでアナウンスされていたように記憶している。
今回、論文としてまとめられたことで、今後はアルツハイマー病のリスクが高い患者を対象とした前向き研究が行われ、よりいっそう「頭の中の消しゴム」の正体がわかってくるだろうと思われる。