[Am J Psychiatry]喘息児は自殺のリスクが高い_12年の追跡調査から

喘息の子供は不安障害やうつ病を併存することが知られている。息が苦しく死んでしまいたくなる(あるいは、死ぬような苦しみを)経験した喘息の子供たちが、自殺したいという思い(自殺念慮)を抱いたとしてもおかしくはないだろう。

今回、Kuo CJらは、喘息と自殺による死亡の関連を調べるため、台湾南部に住む11歳~16歳の学童を対象に1995年10月~1996年6月にかけて大規模コホート研究を実施した。

162,766名の親子が文書やビデオによる質問調査を受け、12年間で合計、喘息群(20,383名)、喘息既往歴群(9,749名)、非喘息群(132,634名)のデータが集まった。これらの結果を国の死因データベースと連結して分析したところ、自然死の頻度に群間差を認めないにもかかわらず、自殺死には群間差で大きな隔たりがあることが明らかになった。

これまでにも喘息を持つ子供の死亡率は相対的に高いと言われていたが、これには呼吸器疾患とは直接関係のない死亡も関与していることが浮き彫りになったのである。それが自殺のリスクだ。

10万人当たりの自殺死は、喘息群、喘息既往歴群、非喘息群の順番に、それぞれ11.0、8.5、4.3であり、非喘息群に比べて喘息群の自殺のリスクは有意に高かった(補正後ハザード比:2.26倍[95%信頼区間:1.43-3.43])。また、喘息既往歴群と喘息群では有意差こそなかったもののハザード比1.76[95%信頼区間:0.90-3.43]であった。

今回の調査対象結果から、人口全体における自殺死に喘息が寄与する割合(人口寄与リスク)を算出すると、なんと自殺する子供14人に1人(7%)が喘息に起因する自殺である可能性があった。

運動による喘鳴や夜間の咳、重症の喘鳴などの症状と自殺死には関連が認められたことからも、これらの喘息症状を少しでも和らげ、子供のメンタルヘルスにも気を配ることの重要性が認識させられる。

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PMID:20634368
Am J Psychiatry. 2010 Jul 15. [Epub ahead of print]
Asthma and Suicide Mortality in Young People: A 12-Year Follow-Up Study.