[Eur J Social Psychology] やり手の彼がコーヒーを勧める訳

どうぞ、コーヒーでも・・・

顧客を口説き落とすとき、彼はコーヒーやお茶、コーラなどカフェインを多く含む飲み物を勧め、自らの意見を述べる。彼のように説得を試みる前に相手方にカフェインを摂取させると、相手にYesと言わせやすくなるかもしれない。そんな研究結果がEuropean Journal of Social Psychologyのオンライン版6月5日号に報告された。

Biotoday経由で知ったこの報告は、Queensland大学のPearl Y. Martinらによるものである。彼らは、学生140名にコーヒー2杯分のカフェイン入りのオレンジジュースまたは通常のオレンジジュースを飲ませ、安楽死や妊娠中絶に対して被験者の意見とは反対意見による文書での説得を試みた。つまり、中絶反対派の学生にはいかに中絶が必要であるかを説く文書を示すわけだ。

すると、カフェインを摂取した学生はカフェインなしのオレンジジュースを飲んだ学生よりも文書による説得で自分の意見を変更する割合が高くなったそうである。

カフェインの摂取によってリラックスしたなど気分が変わったことで説得に応じやすくなったのでないか?との疑問が生じるわけだが、研究者らは気が散る状況下でも同じ結果が得られていたことから、気分の変化によって説得されやすくなったということでないとしている。

著者らは、事前の試験でカフェインが脳の情報処理能力を高めることを報告しており、今回の結果は、カフェイン摂取により脳の情報処理能力が高まったことによって、説得文書に対して合意しやすくなったのだろうと考えている。

そして「営業会議前や政治的な話を聞く前などにおいて、コーヒーやお茶、コーラなどカフェインを多く含む飲み物を摂取することで人がどれほど説得されやすくなっているかを考えてみてください」と話している。

【Telegraph】Coffee drinkers say ‘yes’ more 
【InterScience】European Journal of Social Psychology Published Online: 5 Jun 2006Effects of caffeine on persuasion and attitude change: The role of secondary tasks in manipulating systematic message processing.

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商談前にコーヒーやオレンジジュースを出されることは多い。そのような場面で、説得を意図して飲みものが出されているわけでもないとは思うのだが、やり手と呼ばれる人たちは知らず知らずのうちに飲み物を出すタイミングまで計算しているということもあるかもしれない。

たかがカフェインの摂取で脳の情報処理能力が変わるというのも「なんだかな~」と思うのだが本当なら興味深い。しかし、もし脳の処理能力が高まった結果が説得されやすさにつながっているのだとしたら、説得力のない文章で同じ実験をすれば逆の結果だってあったのかもしれない?説得できるかどうかは説得に使った文章の出来不出来に大きく左右されるんではなかろうか?

若い人を説得するのは簡単だけど、年寄りの考えを変えるのは難しい。この同じ実験を老人に対してやっても同じ結果が得られるのだろうか?古い考えの持ち主になんとか意見を伝える手段がほしいものである。

そんなことを考えた。