[PNAS] ある恐怖を減らす方法

対人恐怖症とクモ恐怖症には共通点があるらしい。
Nature Newsに”A Pill to beat fear(恐怖に打ち勝つ薬)?”というタイトルを見かけて目を通してみた。

大勢の観衆を前にしてアガッテしまい頭が真っ白になる?
クモを見て恐怖におののき固まってしまう?

そんな恐怖症を予め和らげる簡単な方法をチューリッヒ大学のLeila M. Soraviaが「Proc Natl Acad Sci U S A」に報告した。

以前から恐怖に直面したときにグルココルチコイドとよばれる体内のホルモンが放出されることが知られていた(そうだ)。また、グルココルチコイド上昇に伴い感情を喚起する脳内の情報伝達系が障害を受けることがわかっていた(そうだ)。そこで、研究者らは考えた。

もしかしたら、グルココルチコイドが上昇するのは恐怖感情を減らすためではないのか?

研究者らは、対人恐怖症患者40人とクモ恐怖症患者20人を対象に プラセボもしくはcortisone (25 mgもしくは10mg)を投与して1時間後に恐怖を起こす条件下(クモの写真をみせるなど)に被験者をおいた。患者の自己申告によって恐怖の程度を評価した結果、内因性グルココルチコステロイド量と恐怖による不安は負の相関があり、グルココルチコイド投与により対人恐怖症もクモ恐怖症もともに恐怖による不安感が和らぐことがわかった。

研究者のde Quervainは「恐怖症患者はもともとコルチゾールレベルが低い」と指摘し、「ステロイドを毎日飲むわけにはいかないが、現在治療として行われている行動療法と組み合わせることは可能だろう」との見解を示している。

【BBC】Hormone could cut spider phobia
【Nature】A pill to beat fear?
【PubMed】Glucocorticoids reduce phobic fear in humans 
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「クモ恐怖症」といわれると何だろうなとちょっと気になる。

だけど、”A Pill to beat fear(恐怖に打ち勝つ薬)”とはいえ、いつ恐怖に遭遇するかは予測などできないから、Natureのニュースでも?が付いているのだろう。

BBCのタイトルのつけ方も、妙にSpiderという言葉が注意を引く。

流れに沿って記事を読むと誰もが思いつきそうな気もするが、最初にステロイドを恐怖の前に服薬させるという発想をもったところががすばらしい。