[nature / JAMA] コーヒーを飲んでいい人悪い人

遺伝子検査を終えて振り返った彼は、コーヒー好きの僕に「君、心臓発作が怖かったら、コーヒーを飲まない方が無難だよ」と言った。

この会話は単なる作り話だが、「JAMA」3月8日号に報告された研究がさらに発展していけば、将来こんな会話も交わされるかもしれない(?)。トロント大学(カナダ)の研究グループは、薬物代謝酵素CYP1A2の遺伝子型を調べた結果、「コーヒーをたくさん飲んでいると心臓発作の危険性が高くなるタイプの人々が存在する」ことを報告した。

アルコールに強い人と弱い人がいるように、人にはそれぞれの体質が存在する。以前よりカフェイン摂取が心筋梗塞のリスクを上げる?上げない?という議論が交わされてきたが、今回の結果はカフェインと心臓発作の関係解明に1歩理解を進める報告かもしれない。

研究者は、カフェインの代謝に影響する「CYP1A2」という薬物代謝酵素に着目した。彼らは、コスタリカ在住で心臓発作を起こしたが生き延びた人々(非致死性の急性心筋梗塞患者)と、対照群各2014名について薬物代謝酵素の遺伝子型を調べ、約55%の人々はカフェイン代謝が遅いCYP1A2*1Fというタイプの遺伝子多型を持っていることを明らかにした。そして、カフェイン代謝が遅いタイプの人は心筋梗塞のリスクが増加しており、コーヒー摂取量が多いほどリスクが高いことがわかった。また、カフェイン代謝が速やかに行われる人々(CYP1A2*1Aタイプの被験者)で心筋梗塞リスクの増加は認められなかったことから、カフェインが心筋梗塞のリスクにかかわっている可能性が示された。

【Nature News】Coffee mixes badly with certain genes
【PubMed】JAMA. 2006 Mar 8;295(10):1135-41.
Coffee, CYP1A2 genotype, and risk of myocardial infarction.

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あえて衝撃的な言い方をすると「1日4杯以上のコーヒー摂取をする60歳未満の人々は、1杯未満の人々よりも約4倍心筋梗塞を起こしやすかった」のである。週刊誌が取り上げそうな衝撃的な結果である。

▼【サンケイスポーツ】コーヒーは善玉?悪玉?遺伝子の差でこんなに違う心臓への影響

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一方、分解が速いタイプの人では逆に1~3杯/日の人は1杯/日の人よりも心筋梗塞のリスクは少なかったという結果になっており、矛盾するような点も若干あるように思う。

また、昔からある議論だが、コーヒーの摂取量が多い人はストレスが多い生活をしていたり、不健康な生活が影響した可能性も完全に否定したうえでの結果でないことに注意は要する。

今回の結果を受けて、簡単な遺伝子検査によって食事指導につなげることを提案することもできるかもしれないが、ライフスタイルの異なるほかの集団でも同じことが言えるかどうかなど、まだまだ検討課題は残っている。

そして、なぜ?どのように?カフェインが心臓発作を起こしているのかは未だ説明されていない。

喧々諤々、コーヒー談義はまだまだ続く・・・・・・・・。

次はどんなコーヒー談義が出てくるのだろうか。