[Diabetes Care] コーヒーの効能はカフェインにあらず

「なんだ、また同じような話か・・・・」と思いつつも「Diabetes Care」2006年2月号に掲載されたのだから、何か今までとの違いがあるはずだと思って論文に目を通してみた。今までにも世界各地でコーヒーをたくさん飲めば耐糖能の向上や2型糖尿病への進展リスクが減ると報告されてきたが、今度は中年以下の米国女性を対象とした試験成績である。コーヒーの入れ方も同時に調査対象にしているようだ。はたしてコーヒーの入れ方で糖尿病のリスク軽減効果は変わるのだろうか?

ハーバード大学公衆衛生学部のRob M Van Dam博士らは、Nurses Health StudyⅡに組み入れられた米国人女性(26-49歳)88,259名を対象に10年間の疫学調査を実施した。その結果、コーヒーを飲まない女性と比べて1日に1杯、2~3杯、4杯以上とコーヒーを飲む量が増えるに従って2型糖尿病への進展リスクは0.87(95%信頼区間;0.73-1.03)、0.58(95%信頼区間;0.49-0.68)、0.53(95%信頼区間;0.41-0.68)と有意に低下し、今までの研究成果を裏付けた。

コーヒーによる糖尿病進展抑制リスクはカフェインの有無に関わらずコーヒーを飲む人で認められ、フィルターで入れたコーヒーでもインスタントコーヒーでもその効力はほぼ同等だった。一方、お茶を1日あたり4杯以上飲む人と全く飲まない人の間に糖尿病リスクに違いはなく、カフェイン以外のコーヒー成分が糖尿病のリスク軽減に関わっていると思われた。

なお、ここでいうカフェイン量は、コーヒー一杯137 mg、紅茶一杯47 mg、コーラ1本46 mgという形で換算した。

「2型糖尿病を防ぐ努力の中心は、あくまでも運動などであって、この結果がコーヒーを飲んで糖尿病を防ごうという話につながるものではない」というコメントが相変わらず添えられている。一方、考察には、なぜ、コーヒーが効果があるかについてはカフェイン以外の理由だろうということ以外、肝心なことは、はっきり書かれていない。

【Medscape】Coffee May Decrease Risk of Developing Type 2 Diabetes in Women
【Leuters】Coffee may lower risk of type 2 diabetes
【PMID: 16443894】Diabetes Care. 2006 Feb;29(2):398-403.Coffee, Caffeine, and Risk of Type 2 Diabetes: A prospective cohort study in younger and middle-aged U.S. women.

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コーヒーの入れ方で何か違いがあったのか?と期待して目をとおしてみた。

「エスプレッソやパーコレーターで主にコーヒーを入れたときには糖尿病リスク軽減との関係を認めなかった」とある。おもしろい!・・・・

ところが、

「しかし、普段からエスプレッソやパーコレーターでコーヒーを入れている人は少なかった」とも書かれていた。

ガク!

こんなデータじゃ信用ならん。

内容に期待などしていなかったが、案の定、期待はずれの報告である。しかし、本報告により、カフェインがコーヒーによる糖尿病リスク軽減の主成分ではないという僕の漠然とした考えは、的外れでなかったことがわかるきがする。知の冒険でも以前から、高血糖/低血糖、ともにGoodなカフェインの話とか、カフェインとインスリン抵抗性ほかなどコーヒーのお話を好んで取り上げてきた。

本論分の考察の中には、デカフェコーヒーの消費量はC-peptide量と相関し、インスリン感受性を高めるという報告(Diabetes Care. 2005 Jun;28(6):1390-6.)や、逆に、フィルターで入れていないコーヒーはLDLレベルを上昇させて心血管疾患のリスクを増すという報告(Am J Epidemiol. 2001 Feb 15;153(4):353-62.)が取り上げられていた。

さてさて、次はどんなコーヒー談義が交わされるのだろうか?もっと新鮮な切り口の論文はないものか・・・・・