米国では女性8人~9人が乳癌になると言われるほど乳癌患者が多い。中には乳がんを恐れるあまり「乳がんになる前におっぱいを取ってしまえばいい!」なんて発想をして、乳房を取ってしまう女性すらいる。
そんな状況下で乳癌遺伝子を発見する熾烈な競争が繰り広げられ、「乳ガン遺伝子・発見!」と大きくマスコミに取り上げられたことのある遺伝子がある。その遺伝子とは、乳癌発症の有力な候補遺伝子として見つかってきたBRCA1と呼ばれる遺伝子である。乳ガン遺伝子をつきとめろ! という本では、そのときの競争の様子が描かれている。
ロイター通信が取り上げたのは、そんな乳癌遺伝子がコーヒー摂取量と乳癌リスクの関係に影響を及ぼしているというものである。
Ottawa大学(カナダ)のAndre Nkondjock博士らが「International Journal of Cancer」に報告したところによると、4ヵ国40施設の BRCA1またはBRCA2遺伝子に変異を有する女性1690名を対象にコーヒー摂取量と乳癌リスクの関係を調査した結果、この二つの遺伝子に変異を持つ女性では、コーヒーを飲まない場合に比べてコーヒーを1日1~3杯、4~5杯、6杯以上飲むと乳がんになるリスクは0.9倍(95%信頼区間;0.72-1.12)、0.75(95%信頼区間;0.47-1.19)、0.31倍(95%信頼区間;0.13-0.71)と、コーヒーを飲む人ほど乳癌リスクは低くなることがわかった。
そして、遺伝子型ではBRCA2遺伝子変異ではなく、BRCA1遺伝子の変異がコーヒー摂取による乳癌発症リスクの低下に関わっていたそうだ。
▼【Reuters】Coffee may lower breast cancer risk for some women<リンク切れ:2008.02.15.>
▼【PMID: 16032702】Int J Cancer. 2006 Jan 1;118(1):103-7.Coffee consumption and breast cancer risk among BRCA1 and BRCA2 mutation carriers.
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「コーヒーに反応しやすい遺伝子」とたいそうなタイトルをつけてしまったが、単にコーヒーの効果が現れやすいのは、乳癌リスクが高いから差がでやすかっただけだという言い方も出来るんじゃなかろうか?
コーヒーを一日6杯以上飲むというのはかなりの量であり、今回の結果は、コーヒーが好きで毎食後に飲んでいるだけでは乳癌リスクを減らすほどの効果があるわけではないと解釈も出来るだろう。
とはいえ、毎日6杯以上のコーヒーを飲んでも害があるわけでなく、乳癌リスクを減らすのだからコーヒー好きには悪くない話である。