これまでの疫学研究で、糖尿病はアルツハイマー病を含む認知症のリスクを高める要因になることが指摘されていた。
今回、九州大学の研究者らがNeurology誌の2010年8月号に報告したところによると、インスリン抵抗性を有する2型糖尿病患者は、アルツハイマー病に関連する脳のプラーク形成リスクが高いのだそうだ。
もしかしたら糖尿病のコントロールによってアルツハイマー病の予防につながるかもしれない。ただし、今回の結果からインスリン抵抗性がプラーク形成の原因であるかが明らかにされたわけでないので、更なる研究を要する。
今回、九州大学のKensuke Sasaki氏らは、福岡県の久山町で1998~2003年に死亡した住民135名(男性74名、女性61名)を対象に剖検による病理分析を行い、糖尿病関連因子とアルツハイマー病との関連を調べた。
年齢や性差、収縮期血圧、総コレステロール、BMI、喫煙習慣、定期的な運動、および脳血管疾患を補正して解析した結果、試験開始時(1988年)に測定した75 g OGTT値や空腹時インスリン値、およびHOMA-IRが高い患者では、アルツハイマー病につながる脳神経変性プラーク(neuritic plaque)沈着の頻度も高いことがわかった。
糖尿病関連因子と神経原線維変化(neurofibrillary tangle:神経原線維のもつれ)に関連は認めず、食後高血糖とアルツハイマー病関連遺伝子APOE e 4の併存は脳神経変性プラーク形成を亢進し、高インスリン血症やHOMA-IR高値とAPOE e 4の並存にも同様の影響を認めた。
以上の試験結果から、本研究により、インスリン抵抗性を原因とする高インスリン血症や高血糖症がAPOE e 4の影響と併せて脳神経変性プラークの形成を加速させることが示唆された。
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PMID: 20739649
Neurology. 2010 Aug 31;75(9):764-70. Epub 2010 Aug 25.
Insulin resistance is associated with the pathology of Alzheimer disease: the Hisayama study.
参考資料
▼Doctor’s Guide
Insulin Resistance, Type 2 Diabetes Linked to Plaques Associated With Alzheimer’s Disease