[Nature Communications] 肥満者のインスリン分泌を増強する新ターゲット

今年4月から刊行されているNature Communicationsは、オンライン限定の学際的ジャーナルとして生物科学、化学、物理科学のあらゆる領域を対象範囲とした独自記事を配信しています。Nature や Nature 姉妹誌に掲載される論文ほど広範囲にわたる科学的影響力をもつ必要はなく、むしろ、特定の科学分野でかなりの注目を集める研究の進展であることが期待されるそうです。

nature_communication_TBP-2
 
 11月23日オンライン公開された京都大学Yoshiharaらの報告によると、thioredoxin binding protein-2 (TBP-2)/thioredoxin interacting protein (Txnip) を欠損させた2型糖尿病モデルマウスを用いた実験によって、TBP-2はインスリンの分泌反応と感受性の両方の制御に関与し、糖尿病病態の発症もしくは悪化に関与している分子であることが示されました。
 
 2型糖尿病では、過栄養状態により脂肪が肥大化して脂肪細胞からアディポサイトカインが分泌されています。アディポサイトカインによって膵Β細胞からのインスリン分泌と抹消組織でのインスリン感受性がともに悪化して高血糖を引き起こされます。
 
 今回、研究者らは自然に糖尿病を発症する動物モデルob/obマウスにおいて膵島や骨格筋でTBP-2の発現が顕著に亢進していることを確認しました。ところが、自然発症糖尿病マウスのTBP-2を欠損させると、膵ベータ細胞においてミトコンドリア脱共役因子uncoupling protein-2(UCP-2)の発現が抑制されるとともにグルコース刺激によるインスリン分泌改善が認められ、また、骨格筋ではIRS-1/Akt signalingの活性化(インスリン感受性の亢進)が観察されました。
 

 ⇒原著: Nature Communications 1, Article number: 127 doi:10.1038/ncomms1127
 Disruption of TBP-2 ameliorates insulin sensitivity and secretion without affecting obesity
 http://www.nature.com/ncomms/journal/v1/n8/full/ncomms1127.html