[BMJ] ビスホスホネートによる食道がん発症リスクの上昇を確認

骨粗しょう症の治療薬として第一選択になっているビスホスホネートにリスクがあるのか無いのか、議論が続いている。JAMAにビスホスホネートに食道がんのリスクがないと報告されたかと思うとBMJには処方歴のある人のほうが食道がんのリスクが高いという結果が報告された。
 
 オクスフォード大学のJane Green氏らは英国の一般開業医研究データベースから40歳以上で、食道がん2954名、胃がん2018名、大腸がん10641名のいずれかと診断された患者を対象に1名あたり5名の対照(年齢、性別、医師、観察期間等を合わせた)をおき、ビスホスホネートの処方回数と処方期間を検討した。

ビスホスホネートは、分析対象の約3%に処方されており、観察期間の平均は7.5年だった。
 
 喫煙歴、飲酒歴、BMIで調整して解析した結果、処方のなかった群に比較してビスホスホネートの処方歴のあった群では食道がんの相対リスクが1.30倍高いことがわかった。また、処方期間が長くなるほど食道がんの罹患リスクは高くなった(1年以:0.98[95%信頼区間:0.66-1.46]、1~3年:1.12[0.73-1.73]、3年以上:2.24[1.47-3.43])。
 
 胃癌と大腸癌については、ビスホスホネート処方群の相対リスクは、胃癌0.87(0.64-1.19)、大腸癌0.87(0.77-1.00)と影響が認められなかった。 
 
 今回の研究では10回以上ビスホスホネートを処方され、処方期間が5年以上の60歳~79歳の患者では食道がんのリスクが1000人あたり1人のところが1000人あたり2人と2倍になることが示された。

⇒原著を見る
BMJ 2010; 341:c4444 doi: 10.1136/bmj.c4444 (Published 2 September 2010)
Cite this as: BMJ 2010; 341:c4444
Oral bisphosphonates and risk of cancer of oesophagus, stomach, and colorectum: case-control analysis within a UK primary care cohort
http://www.bmj.com/content/341/bmj.c4444.full

骨粗しょう症は骨折のリスクが高く、閉経後の女性において骨折のリスクが高まっている患者に対する利益は確かなものだと思われますが、男性やリスクの低い女性、長期効果については十分なエビデンスがないと著者は述べています。著者は高齢者の骨折は公衆衛生上も重要な課題であるため、利益とリスクを天秤にかけ、最適な使い方を示す研究が必要だとしています。

「ビスホスで食道がんのリスクが2倍に!」
とタイトルをつけたら、結構ショッキングなニュースです。
しかし、そのリスクは5年以上使っていた1000人に1人が1000人に2人になるものであり、60歳以上の高齢者でのことです。また、「患者が服用後すぐに横にならない」等の適正な使用方法にかんするレクチャーを受けていたか否かは不明ななかでの検討です。

「がん」というリスクを軽く見るわけに行かないでしょうが、「骨折して寝たきりになる可能性」も見逃すわけにはいきません。

本論文から骨粗しょう症へのビスホスホネート使用をむやみに見合わせるという短絡的な結論に飛びつくことなく、冷静な目で利益とリスク、そして適正使用について考えるきっかけになればいいと思います。

 ⇒JAMAの記事もご覧ください。