[Diabetes Care] 糖尿病と癌発症の関係_ADA/ACSのコンセンサスレポート

 「糖尿病は○○のリスクファクターである」とは聞き飽きるほど
 聞いた言葉だが、糖尿病と癌の関連には様々な報告が入り乱れて
 おり、中には糖尿病への治療介入ががんのリスクを高めているの
 ではないかという報告もあって、どのように考えていいのかわか
 りにくい。
 
 米国糖尿病学会(ADA)と米国がん学会(ACS)がDiabetes Careに出
 したコンセンサスレポートによれば、発がんのリスクを恐れて糖
 尿病治療の選択を変更する必要は無いということであり、主に以下
 の点が議論された。非常によくまとまったレポートだと思う。
 
 1.糖尿病とがん発症の関係
  
  糖尿病と正の相関が見られる癌: 
   肝臓がん、すい臓がん、子宮内膜症、結腸・直腸がん、乳がん、膀胱がん
   
  糖尿病と負の相関が見られる癌:
   前立腺がん
   
 2.糖尿病とがんの共通の危険因子
 
  加齢、肥満、食事やアルコール、喫煙など不健康な食習慣、身体活動の不足など
  女性よりも男性の方が年齢で補正したリスクは若干高い
  
 3.糖尿病とがんのリスクに関連する生物学的要因
 
  インスリンやインスリン様成長因子、高血糖そのもの、炎症
  
 4.糖尿病の治療ががん発症やがんの予後に影響するか
 
  メトホルミン⇒発がんリスク低い
  インスリン注射⇒発がんリスク増加と関連  の可能性
  チアゾリジン(TZDs)⇒どちらともいえない
    
  ただし、特定の治療法が発がんに影響を与えるかどうかは様々な
  要素が交絡因子になりえる。
  
 

⇒原著を見る
PMID: 20587728
Diabetes Care. 2010 Jul;33(7):1674-85.
Diabetes and cancer: a consensus report.