[PLoS One] 競馬予想にハイテク技術 馬の得意距離分かります!

 その男は得意げだった。
 いつも客に素通りされていた屈辱の日々を経て、いまや黒山の人だかりを集める華の予想屋に成長した彼は、密かにダブリン大の研究を入手して活用していたのかもしれない(していないかもしれない)。

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 公営競技の場内で競走(レース)の着順を予想する「予想屋」は、自身が推定するレース展開や自分が集めた情報を演説して客を集める。よく的中すれば人は集まる一方、的中率が低すぎると許認可を取り消されることもあるというから大変だ。
 
 予想を知りたければ、客はお金を払って最後の予想メモを受け取る。ただし、予想が当たっても当たらなくても返金を受けることはできない。もちろん、客も予想屋も真剣になるだろう。
 
 そんな競馬予想にあたって、競走馬のの距離特性を見極めるのは重要である。アイルランドのダブリン大学の研究グループは競走馬の成績とDNAの個体差の関連を調べ、DNAによって短距離レース向きか長距離向きかを推測できることを米科学誌プロスワンに発表した。
 
 研究グループでは、1998年~2009年にアイルランドとニュージーランドで生まれたサラブレッド148頭について、各馬が過去に勝利した最も格付けの高いレースの距離を調べることにした。同グループでは、筋肉形成に関わるとされる遺伝子、ミオスタチン(MSTN)のDNA配列に着目し、次の3つのグループに分けて調べた。
 
 ①両親からともにMSTNの変異を受け継いだC/C型、
 ②片親から受け継いだC/T型、
 ③変異のないT/T型
 
 そして、DNA型と勝利したレースの走行距離を比較したところ、1200メートル以下のレースではC/C型が最も多く、レースの走行距離が延びるにつれT/T型が勝利する割合が増えることが分かった。C/T型はC/C型とT/T型の中間に位置していた。
 
 過去の経験則から長距離向き、短距離向きということは言われてきた馬たちだが、本研究で競走馬の成績と馬のDNA個体差の関係が初めて示された。
 
 これで馬たちが得意な距離のレースに専念させてもらえるようになれば、馬も飼い主も幸せになれるかもしれない(ならないかもしれない)。
 
 *なお、「予想屋」の話はまったくの創作であり、原著には何の関係もないことをお断りしておく。
 

⇒原著を見る
PMID:20098749
PLoS One. 2010 Jan 20;5(1):e8645.
A sequence polymorphism in MSTN predicts sprinting ability and racing stamina in thoroughbred horses.