「そんなの、寝れなくなっちゃうじゃないか~!」という人がいるかもしれないが、もし、糖尿病のあなたが夜間の低血糖発作で困っているなら、コーヒーを毎日飲むようにしてみたらどうだろうか?Royal Bournemouth病院(英国)のRichardson TらがDiabetes Careの6月号に報告した内容が面白い。
今回の結果を単純に「コーヒーを飲めば低血糖発作が起こらない」と解釈するのは早合点であることを念頭に置きつつ、どんな報告なのか目を通してみた。
Richardsonらは、糖尿病になってから20年近くが経過した1型糖尿病患者19名を対象に無作為比較二重盲検クロスオーバー試験を実施した。夜間の低血糖状態はプラセボを服用した時は132分だったのに対して、1日2回、2週間にわたって250mgのカフェインを摂取した時には平均49分と有意に短くなった。夜間の低血糖頻度と心拍変動(自立神経障害の指標として評価)には相関を認めなかった。カフェインは、交換・副交感神経の活動とは関係なく夜間の低血糖頻度を抑えていると論じている。
▼【PubMed】Diabetes Care. 2005 Jun;28(6):1316-20.
Influence of caffeine on frequency of hypoglycemia detected by continuous interstitial glucose monitoring system in patients with long-standing type 1 diabetes.
カフェインが夜間の低血糖発作を抑制すると聞いて真っ先に思い浮かんだのが、カフェインを飲んで眠れないほど交感神経が活発にれば、糖代謝も促進されるのだろうか?ということだった。彼らの研究では心拍変動を自立神経障害の指標として論じている。心臓へつながる神経と消化器へつながる神経支配を同一のものとして論じられないとは思うのだが、自立神経障害の改善とは別の機序でカフェインが低血糖発作を抑えるのだとしたら、面白い話だと思う。
また、今までにもコーヒーのお話として、コーヒー(たいていの場合はカフェインの代表としてのコーヒー)と各種疾患との関係についてPubMedから論文のつまみ食いをしてきていたが、これまでの話だと、糖尿病の発症リスクとカフェインの関連を論じたものが多かった。
高血糖ではなく、低血糖になるのをカフェインが抑えるという知見もまた、面白く感じた。
ところで、JAMA7月6日号に、コーヒーと糖尿病リスクの関連を調べた研究のレビューが掲載されていた。取り上げようとおもいつつ仕事に追われているうちに、この内容についてはMedWaveが取り上げてしまったので軽く触れるだけにしておこう。
オランダAmsterdam自由大学のRob M. van Dam氏らは疫学研究15件をレビューし、コホート研究9件から19万人を超える被験者データを集め、1日コーヒーを0~2杯飲む人に比べて6~7杯以上飲む人では2型糖尿病になるリスクが35%減ること改めて示し、また、耐糖能異常のリスクについても7試験1万5千人を超える被験者を対象に分析し、毎日のコーヒー摂取が0~2杯の人よりも5杯以上飲む人のほうが約半分(オッズ比0.54、95%信頼区間:0.42-0.68)になることを示した。
世界各国で行われた研究は、一様にコーヒーの摂取量が多いと食後高血糖が起こりにくいことを示しており、なぜ、コーヒーがよいのかについての考察では以下の点をあげている。
・コーヒーに含まれる成分による抗酸化作用
・コーヒーに含まれるクロロゲン酸の血糖値軽減作用(金属キレート剤としての作用があり、、小腸でのグルコース吸収を競合的に阻害すると考えられている)
・マグネシウムの含有量が多く、マグネシウムがインスリン感受性や分泌反応に好影響を与えている。
▼【PMID: 15920045】 JAMA. 2005 Jul 6;294(1):97-104.
Coffee consumption and risk of type 2 diabetes: a systematic review.
▼【MedWave】1日に6~7杯のコーヒーで2型糖尿病リスクが3分の2に
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まだまだ、続くだろうコーヒー談義でした。