[Nat Med] 糖尿病網膜症の秘密 周皮細胞の死のメカニズム

 糖尿病で怖いのは3大合併症だが、その中でも網膜症は失明という大変な事態を引き起こすものである。網膜周囲の血管網を支えている周皮細胞は生きていくために増殖因子を必要とする。ところが、高血糖によって網膜における周皮細胞は、自滅し、無細胞毛細血管(acellular capillary)の形成が引き起こされる。
 
 こうした高血糖に起因する最も特徴的な血管の病的変化には、何らかの形で血小板由来増殖因子(PDGF)が関わっていると考えられていいたが、その詳細は不明であった。

 
 今回、ジョスリン糖尿病センターのP Geraldesらは、糖尿病マウスの網膜ではPKC-δの活性上昇と無細胞毛細血管数が増加し、これらはインスリン投与で改善しないことを報告した。
 
 PKC-δを欠損したマウスでは、p38αMAPKやSHP-1(プロテインチロシンフォスファターゼ;新しく見つかったPKC-δの標的タンパク)の活性化、血管細胞でのPDGFシグナル伝達の阻害などは認められず、糖尿病マウスの脳周皮細胞および腎皮質では、p38αMAPKやSHP-1の活性化が認められた。
 
 これらの知見は、高血糖がPDGF受容体の脱リン酸化とその下流にあるシグナル伝達を減弱させ、NF-κBとは別経路で周皮細胞のアポトーシスを引き起こすことを示している。
 
PMID:
Nat Med. 2009 Nov;15(11):1298-306. Epub 2009 Nov 1.
Activation of PKC-delta and SHP-1 by hyperglycemia causes vascular cell apoptosis and diabetic retinopathy.