[Nat Med] 破壊性関節炎が関節間に広がる仕組み

変形性関節症では、関節軟骨の不可逆な変性が生じる。この疾患は、最初に少数の限られた関節だけで発症するが次第に健康だった骨まで侵食するようになる。この病気の進行はどのような経路で生じるのだろうか?

今回、ドイツの研究者S Lefevreらが、病気の発症メカニズムに関する興味深い知見を報告した。彼らは、関節リウマチの滑膜に存在し、関節破壊に重要な役割をもつ関節リウマチ滑膜繊維芽細胞(RASF)が遊走能を持つことに注目し、in vivoで関節リウマチを拡大する可能性を検証した。

重症複合免疫不全マウスの皮下に健常人の軟骨とRASFを移植し(病変側;炎症の起点)、反対側にはRASFを含まない軟骨を移植(正常側)した。その結果、病変側から正常側にRASFが血管系を介して移動し、正常側の軟骨をも破壊することが示された。

このとき、変形性関節症のマウスではヘッジホッグ(Hh)シグナル伝達(正常な軟骨細胞の成長と分化を調節)は活性化されており、複数種の遺伝子改変マウスを使った実験で、軟骨細胞のHhシグナル伝達のレベルが高いほど、より重症な変形性関節症表現型が生じることがわかった。逆に薬理学的あるいは遺伝的にHhシグナル伝達を阻害すると変形性関節症の重症度は低下した。

Hhシグナル伝達阻害には、RUNX2(runt-related transcription factor-2)がADAMTS5(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motif-5)の発現調節が関わることも示されており、この一連の結果はHhシグナルを遮断すれば、関節軟骨変性を阻止する治療になりえることを示している。

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PMID:19898488
Nat Med. 2009 Dec;15(12):1414-20. Epub 2009 Nov 8.
Synovial fibroblasts spread rheumatoid arthritis to unaffected joints.

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PMID:19915594
Med. 2009 Dec;15(12):1421-5. Epub 2009 Nov 15.
Modulating hedgehog signaling can attenuate the severity of osteoarthritis.