クロバエの幼虫ーーうじ虫ーーなんて、気持ち悪い!と言うなかれ。今、うじ虫に注目が集まっている。Wired Newsには米国のウジ虫治療(MDT:Maggot debridement therapy)について詳しく書かれた記事が掲載されたと思ったら、「Clinical Infectious Disease」の10月1日号の記事にでも、うじ虫治療についてのBreif Reportが載っていた。
カリフォルニア大学のRonald A Sharmanらの報告によると、MDTを行わなかった19の壊疽のうち6つ(32%)が術後に感染を生じたのに対し、手術に先立ってMDTを実施した10壊疽では1例も術後の感染を生じなかった(95%信頼区間:10-54%)
▼【Clinical Infectious Disease 2004:39:7:1067】
Presurgical Maggot Debridement of Soft Tissue Wounds Is Associated with Decreased Rates of Postoperative Infection
▼【Doctors Guide】
Maggot Therapy Linked with Reduced Post-Operative Wound Infections
さらに、米国でもうじ虫が増産されるようになったようで、日本でもこの3月から岡山大学の心臓血管外科グループが、うじ虫を使った糖尿病性壊疽の治療に取り組み始めたようだ。この国内での取り組みについては、三井秀也の「ウジムシ治療」ホームページに紹介されている。現在は5例が実施されているということだ。
▼【Wired News】米国で「治療用うじ虫」の生産が倍増
▼【Forensic Entomology】クロバエーーうじ虫ーーのライフサイクル
▼【MedWave】2004.9.13 糖尿病性足潰瘍の新治療法
医療用にうじ虫を使っている人がいると思えば、科学捜査の分野でも大活躍のようだ。死体が腐敗する過程でうじ虫が植えつけられると、これが死亡時刻推定の重要な手がかりになるという。
▼【Wired News】他殺死体に見つかるうじ虫が、科学捜査の重要な手がかりに
以前に英国におけるうじ虫治療について取り上げたが、初めて知ったときには「え~!気持ち悪い!」と思ったものの、よくよく考えてみれば自然のサイクルを利用した方法として実に理にかなっていると思う。
うじ虫なんて気持ち悪いと治療を拒絶する患者もいるようだが、”うじうじ”考えてないで早くMDTをやってもらった方が懸命だろう。