[Science] 脳は自分の動きを分かっていない

 身体を動かそうと思うことと、実際に身体を動かすことの間には乖離があるようだ。

 神経認知センター(フランス)のM. Desmurgetらは、腫瘍摘出のために脳手術を受けた被験者を対象に脳の運動領域の反応を調べた結果、「伸びをして気持ちがいい」というような主観的体験は、動こうとする意識によって作り出されているものであり、運動動作に関係する脳領域と運動しようとする意識に関係する脳領域は別物であることをScienceに報告した。

 
 脳手術をする際、術前処置として局所麻酔によって意識がある状態のまま脳を電気刺激することがある。研究者らは、このような覚醒状態にある被験者7名に対して運動応答を引き起こすのに重要な運動前野領域(後頭頂葉と前運動皮質の2箇所)を電気刺激し、そのときの被験者の反応と意識の関係を調べた。
 
 彼らの研究によると、後頭頂葉刺激によって被験者は唇を動かし話をしたくなったが、実際に口を動かし話し出すことはなく、刺激を強くしていった場合、実際には発話してもいないのに、自分は本当に話をしていると思っていた。これに対し、前頭葉の運動前野を刺激した場合、被験者は口や手足を動かしているにもかかわらず、自分が動かしていることを意識することはなかった。患者の意識の有無に関わらず、動かす前には頭頂領域の活性が増加しているのであった。

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PMID: 19423830
Science. 2009 May 8;324(5928):811-3.
Movement intention after parietal cortex stimulation in humans.

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▼ScienceNOW Daily News 7 May 2009
When Your Brain Doesn’t Know What Your Body Is Doing
▼Eurek Alert
How the brain moves the body