[Science] 幸福な時間遺伝子_酒豪バエ誕生!

 酒は飲んでも飲まれるな
 酒は百薬の長とは言えど、よろずの病は酒より起これ。
 
 酒(アルコール)は適度な量(もしくは、低濃度)であれば健康によいが、過度(もしくは、高濃度)であれば健康を害するといわれる。アルコール消費障害は、個人の、そして、ひいては社会の荒廃につながる問題である。そこで、アルコール依存を起こすメカニズムの探求は活発な研究が進められている。
 
 今回、カリフォルニア大学のCorl ABらは、ショウジョウバエの研究からヒトのエタノール中毒と同様の行動反応を引き起こす個体を選び出し、その原因となる候補遺伝子にhappyhourと名前を付けた。
 
 サイエンス誌に彼らが報告したところによると、happyhourはSte20ファミリーキナーゼのホモログをコードする遺伝子であり、これらの遺伝子変異のあるハエは、エタノールによって誘導される鎮静作用が生じにくい(だから、アルコール依存になりやすい)。このエタノールに対する抵抗性はhappy遺伝子を強く発現させることで回復した。
 
 ラットとマウスを用いたさらなる詳細な研究の結果、著者らは上皮増殖因子受容体(EGFR)のシグナル伝達がエタノールの嗜好性と消費による行動変化に重要な役割を演じることを突き止めており、EGFRの阻害剤がアルコール依存の治療に役立つ可能性を示唆している。
 
 
PMID: 19464045
Cell. 2009 May 29;137(5):949-60. Epub 2009 May 21.
Happyhour, a Ste20 family kinase, implicates EGFR signaling in ethanol-induced behaviors.

 「酒に強いから弱い」とは、なんともおかしな話だが、これは「熱さを感じなければ火傷をしても気が付かない」のと同じで、体が危険な状態になっているのに、それに気が付かない状態だとも言えるかもしれない。
 
 酒を飲んでほろ酔いになるのは、いい気分である。いわば、ハッピーな時間であろう。そのハッピーな時間を演出するのに関わる遺伝子、happyhourとは上手く名付けたものである。