
博士、何とかなりませんか?
壊れた愛を復活させる。簡単だよ、そんなこと。
愛のホルモンを作動させてやればいいのさ。
Nature Neuroscienceの最新号に、脳の下垂体後葉にある謎の蛋白の役割が報告された。
シナプトタグミン(synaptotagmin;Syt)は、神経細胞のシナプス小胞や副腎髄質細胞・下垂体細胞などの分泌顆粒に局在する膜結合たんぱく質であり、多くの種類からなるシナプトタグミンファミリーを構成する。カルシウム依存性の早いエキソサイトーシスに関係するとされるが、カルシウムに依存しないものの存在もあり、その機能はわかっていなかった。
今回、University of Wisconsin School of MedicineのZhenjie Zhangらは、脳下垂体後葉にシナプトタグミンⅣ(SytIV)が存在することを見出し、ノックアウトマウスを用いた検討から、 この蛋白がオキシトシンやバソプレッシンなど神経ペプチドの放出に関わる可能性を示した。
同グループのMeyer Jackson氏は、今回の結果について女性の健康を考える上で非常に興味深いと語っている。
Jackson氏によるとSytⅣは他のシナプトタグミンと異なり、ただカルシウムシグナルをホルモン放出へと変換するだけでなく、指令の強さを調節するのだそうだ。Jackson氏はSytIVの量が妊娠や出産、閉経後に変化すると推測しており、実際に臨床レベルでSytⅣと妊娠や出産、閉経との関係がどうなっているのかについて、今後の研究に興味がもたれるところである。
また、彼の興味は、愛情ホルモンとして知られるオキシトシンの効果にも及ぶ。
同氏は、昨年、バイアグラが脳下垂体後葉において電気刺激によるオキシトシン遊離を起こすことを報告している。
▼Research > Nature Neuroscience Published online: 11 January 2009
Synaptotagmin IV: a multifunctional regulator of peptidergic nerve terminals
▼EurkAlert
Protein that regulates hormones critical to women’s health found in pituitary
マウスでの話ではあるが、脳内にオキシトシンというホルモンを注射してやれば信頼感が増し、オキシトシンを欠乏させればメスはオスを拒否するという実験結果も報告されている。このような結果をうけて、「信頼と愛のホルモン:オキシトシン(Oxytocin)」などといって、愛の媚薬香水がネット上では売られている。こうした香水の信頼性については良く知らないが、少なくともマウスのレベルでその効果は確からしい。
この記事が触発したのかどうかはしらないが、1月8日号のNatureの記事によれば、鼻腔へのオキシトシン投与で信頼関係の薄れた夫婦間の関係を修復することも可能かもしれない。
▼Reuters Wed Jan 7, 2009 1:35pm EST
Could we reduce love to a pill? Maybe, says expert
▼Nature 457, 148 (8 January 2009)
Being Human: Love: Neuroscience reveals all