[NEJM] 長期罹病の糖尿病患者で血糖強化は心血管イベントを抑制するか?

血糖コントロールの強化によって心血管イベントが抑制されるとのデータはあったが、罹病期間の長い患者でどうなのかははっきりしていなかった。

 今回、Phoenix Veterans Affairs Health Care Center(米国)のDuckworth Wらは、2型糖尿病に対する治療の反応が十分でなかった退役軍人1,791名を対象に強化血糖管理群と標準管理群に無作為に分けて追跡調査を実施した。

 対象者の平均年齢は60.4歳、平均罹病期間は11.5年、心血管イベントの既往歴は40%であった。血糖強化群のHbA1c目標値は標準治療群のー1.5%に設定し、結果、HbA1cの中央値は標準療法群 8.4%,強化群で 6.9%であった。追跡期間 5.6 年(中央値)で、標準治療群(264名)と強化群(235名)に心血管疾患イベントの発生までの期間や死亡、最小血管合併症の発生率に差は認めなかった。なお、有害事象(主に低血糖)の頻度は、それぞれ17.6%、24.1%であった。

著者らは、コントロール不良の2型糖尿病患者に強化血糖管理を行っても主要血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、虚血性壊疽による切断など)や死亡、最小血管合併症の発生率に影響は認められなかったと結論している。

▼PubMed > N Engl J Med. 2009 Jan 8;360(2):129-39.
Glucose control and vascular complications in veterans with type 2 diabetes.

 この結果は、インスリンによる血糖強化が心血管合併症を減少させるとしたUKPDSやKumamoto Studyと異なるものである。しかし、これらの試験(それぞれ20年、10年)と比べて観察期間は5年と短かったことも試験結果が異なったことに影響しているのではなかろうか?

また、当たり前のことではあるが、罹病期間が長いということはそれだけ治療に対する反応性も期待しにくい状態になっているわけなので、糖尿病とわかった段階で早いうちから血糖管理をすべきであることを示唆するものだと思われる。