スポーツ内科医の日記さんに日本循環器学会が禁煙ムービーを出したと載っていた。き、き、禁煙の・・・さんがコメントに書いているように、どこでこれを喫煙者に見てもらうかが一つの課題だろうと思う。せっかく良いものを作ったのだから、うまく利用されるといいですね。
さて、話は変わるがカフェイン抜きコーヒーを飲むことでタバコを吸って肺癌になるリスクを減らすことができるかもしれないという報告があったようだ。
だからといって短絡的に信じて「コーヒーを飲んでいるから大丈夫」などとは間違っても思ってはいけない。
情報の真偽のほどはしっかり判断する必要があると思うが、発表者の主張は以下のようになっている。
ロズウェル・パーク癌研究所(ニューヨーク州)のジュリー・ベイカー博士らが第95回米国癌研究学会で発表したところによると、コーヒー、紅茶、緑茶はフィトクロムを多く含んでいるため、喫煙者の癌発症リスクを低下させるだろうという。フィトクロムとは植物に含まれる天然の色素タンパク質であり、植物の伸長成長や葉の展開などを制御するといわれている。
彼らはこの仮説を検証するため、喫煙している入院患者1,979名を対象にコーヒー摂取量と肺癌発症について検討した。その結果、1日4杯以上レギュラーコーヒーを飲んでいた人は全く飲まない人と比べ、肺癌の発症率が42%以上高かった(95%信頼区間:1.06-1.91)が、1日1~3杯のコーヒー飲用と癌の危険性には全く関連性がなかったらしい。一方、カフェイン抜きコーヒーを飲んでいた人の肺癌発症リスクは低下していた(1日1杯の場合のオッズ比:0.68、95%信頼区間:0.54-0.85、1日2杯の場合のオッズ比:0.64、95%信頼区間:0.51-0.81)。
肺癌の発症リスク低下はカフェイン抜きコーヒーでのみ認められたことから、フィトクロムの有益性は多量のカフェイン摂取によって損なわれてしまうと考えられた。
▼Doctor’s Guide:AACR: Decaf, But Not Regular, Coffee May Help Protect Smokers Against Lung Cancer
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これまでにもコーヒーを飲むと糖尿病リスクが軽減するという報告があり、そのいくつかを知の冒険でも取り上げてきたが今回の報告は今まで取り上げた報告と矛盾する点を含んでいる。ベイカー博士らによると、”フィトクロムがあるから肺癌の発症リスクが軽減する”ということで、カフェインが悪者扱いをされている。
本当だろうか?
まあ、いづれにしてもタバコを吸わなかったら肺癌のリスクも低いわけで、禁煙すれば難しいことを考えなくてもいいわけだ。ストレス過多の近頃、再びタバコを吸いたくなるのを必死に我慢する今日この頃なのだ。
そんなときは、日本循環器学会 禁煙ムービーとあわせて、あの強烈なインパクトのあるニコレットCMを思い出そう。
===追記2004.04.28===
以前から気にかかっていた第14回日本疫学会の報告もメモとして記しておく。コーヒーをたくさん飲んでいると肝細胞癌の発生率は低いと大阪市立大学大学院公衆衛生学の福島らが報告している。また、同じ記事の別の項目で、大規模疫学研究 Japan Arteriosclerosis Longitudinal Study(JALS)から、喫煙の死亡に対するハザード比が1.5倍だとの報告がある。
▼コーヒーと夜食の頻回摂取はC型慢性間疾患患者の肝がん発生を予防か[要登録]