
ちょっと前の報告になってしまうが、知の冒険ではコーヒー摂取と健康の関連を取り上げてきたこともあり、やっぱり、この研究は取り上げておこう。
コーヒー摂取は子宮体がんのリスクを下げる
今回、厚生労働省研究班による研究成果から、日本人を対象とした研究では、コーヒーをよく飲む人ほど子宮体がんのリスクが低いと報告された。これまでに、欧米の研究では、コーヒーをよく飲む人が子宮体癌が低いかどうかについて定まった見解が得られていなかったが、子宮体がんは肥満や糖尿病、女性ホルモンの働きが活発な人で多いという話もあるため、欧米人と日本人での疫学には違いが出る可能性も考えられる。
今回、40~69歳の女性53,724 名を対象として、生活習慣に関するアンケートを実施し、約15年かけて子宮体がんの発生を追跡調査した。本調査において、追跡期間中に117名に子宮体がんが確認された。
子宮体がんのリスクをコーヒー摂取量を4つのグループに分けて比較した結果、コーヒーを飲む頻度が週2回以下のグループに比べてコーヒーをよく飲むグループで子宮体がんのリスクは低く、1日1~2杯飲むグループでは約4割(オッズ比0.61;95%信頼区間0.39-0.97)、3杯以上飲むグループでは約6割(オッズ比0.38;95%信頼区間0.16-0.91)、リスクが抑えられることがわかった。
子宮体がんは、パピローマウイルスの持続感染が原因とされる子宮頸がんと異なり、ホルモン環境が発症と関係するといわれている。研究者らは、コーヒー摂取が子宮体がんを抑制する可能性の考察として「コーヒーが体内のインスリンやエストロゲン量に影響を与える可能性」を指摘している。また、欧米の研究で結果がさまざまに異なっていた理由について、「欧米では、ホルモン補充療法が結果に影響を見えにくくしていた可能性がある」と指摘している。
なお、緑茶ではコーヒー同様のリスク軽減効果はなかったということのようである。
▼PMID: 18711700 > Int J Cancer. 2008 Aug 18. [Epub ahead of print]
Coffee consumption and risk of endometrial cancer: A prospective study in Japan.
知の冒険でも過去にコーヒー摂取が糖尿病リスクを軽減することを取り上げているが、緑茶ではなく、コーヒーにリスク軽減効果が見られるという点では一致しているところが気にかかる。また、コーヒーと一口に言っても豆の品種、焙煎方法、抽出の仕方で含まれる主要成分は大きく異なるわけで、これもまた、この種の疫学調査の課題として気にかかる問題である。