
今年もまたやってきた。
ノーベル賞発表のシーズンである。
そして(個人的には)楽しみにしていたイグノーベル賞の発表である。本家ノーベル賞前に発表されるイグノーベル賞では、面白くユーモアあふれる科学研究が受賞対象となり、賞金ゼロ円の世界的な栄誉ある賞が授与される。
さて、いわゆる本家ノーベル賞では、「自然免疫」の仕組みを解明した大阪大学の審良(あきら)静男教授が候補者に上がっていることが米国の情報会社トムソン・ロイターより発表されて騒がれているわけだが、今年のイグノーベル賞はどうなったのだろうか?
2008年10月2日、ハーバード大学のサンダース・シアターにてイグノーベル賞の授賞式が行われた模様である。以下、受賞研究を列挙した。
今年の受賞一覧は以下の通り。(注;英語原文の日本語訳ではありません)
★ 名前の聞こえがよいほどおいしく感じる 「栄養学賞」
トレント大(イタリア)とオックスフォード大(米国)の研究者らは、ポテトチップがフレッシュでサクサクっとしたように電気的音声を被験者に聞かせる実験で、同じ食べ物でも聞こえがよい方がおいしく感じることをJournal of Sensory Studies, vol. 19, October 2004, pp. 347-63.に報告した。
★ 植物にも人間同様の尊厳を認めた法案 「平和賞」
動物だけでなく植物にまで尊厳を認めた、”スイスの人間以外の生物工学に関する連邦倫理委員会”およびスイス国民は、なんと平和な思想の持ち主なんでしょう。
情報元:Dignity of living beings
★ アルマジロは歴史を変える? 「考古学賞」
サンパウロ大学(ブラジル)の研究者は、考古学現場付近に生息するアルマジロが、発掘品の埋蔵場所を深く埋めたり持ち去ったりして変更してしまうことで、発掘現場をめちゃくちゃにするだけでなく、時に歴史が変わって理解されてしまう可能性があることをGeoarchaeology, vol. 18, no. 4, April 2003, pp. 433-60.に報告した。
★ ノミのジャンプ力比較 イヌ vs. ネコ 「生物学賞」
フランス国立トゥールーズ獣医大学の研究者らは、イヌに寄生するノミは、ネコに寄生するノミよりもより高くジャンプすることを Veterinary Parasitology, vol. 92, no. 3, October 1, 2000, pp. 239-41.に報告した。
★ プラセボ薬の値段は効果に反映? 「医学賞」
デューク大学(米国)行動経済学の研究者は、高価なプラセボ(薬効をもたない偽の薬)は、安いプラセボよりも効果が高いことをJAMAのMarch 5, 2008; 299: 1016-1017.に報告した。
★ 脳も神経もない粘菌が最短ルートを導き出す 「認知科学賞」
北海道大中垣俊之准教授、広島大小林亮教授、東北大石黒章夫教授ら、複数の研究者が、アメーバの迷路実験により、単細胞生物である「真正粘菌」が迷路の最短距離を導き出すことを発見し、Nature, vol. 407, September 2000, p. 470.に報告した。
★ プロのラップダンサーの稼ぎは排卵周期と関係 「経済学賞」
ニューメキシコ大(米国)の研究者らは、プロのラップダンサー(これはストリッパーのこと?)の排卵周期とチップの稼ぎの関係を調べ、生殖能力の最も高い排卵周期にあるとき、ダンサーの稼ぎはもっともよいことをEvolution and Human Behavior, vol. 28, 2007, pp. 375-81.に報告した。
★ 大量の糸や髪の毛が絡まるのは必然である 「物理学賞」
米カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者らは、大量の糸や髪の毛は外的要因の有無にかかわらず必ず絡まることを数学的に証明し、米国アカデミー紀要(PNAS) vol. 104, no. 42, October 16, 2007, pp. 16432-7.に報告した。
★ コカ・コーラには避妊効果があるのだろうか? 「化学賞」
ボストン大のアンダーソン教授は、コカ・コーラには避妊効果があるとの主張をNew England Journal of Medicine, 1985, vol. 313, no. 21, p. 1351.に報告(古い!!)し、台北医科大学のC.Y.Hongらは、コカ・コーラに避妊効果はないとの主張をHuman Toxicology, vol. 6, no. 5, September 1987, pp. 395-6.に報告(これまた古い!!)した。この正反対の結果に対してイグ・ノーベル賞が送られたことについての問い合わせに対し、清涼飲料水大手コカ・コーラ社はノーコメントの模様。
★ ”You Bastard: A Narrative Exploration of the Experience of Indignation within Organizations.”「文学賞」
これは、どんな物語なのだろうか?
何だよ!この会社、何だよこの製品!なぜなんだおい!などと思った憤慨する経験を書き綴ったものであろうか?
▼Winners of the IgR Nobel Prize(歴代受賞者リスト)