
ヒリヒリヒリ・・・・
ジリジリジリ・・
なんとなく熱い感じ。
静脈麻酔を行った患者はしばしば灼熱感を報告し、刺激性の吸入麻酔薬は用量制限を余儀なくされることがある。
今回、Georgetown大学(米国)のMatta JAらは、電気生理学的な実験で、有害性全身性麻酔薬(総称としてetomidateという?)は、末梢侵害性感覚神経の多くに存在するTRPA1チャネルを活性化することを報告した。彼らの報告によれば、術後の灼熱感を軽減するには、TRPA1受容体を活性化しない全身麻酔薬を選択するほうがよいという。
温度刺激で活性化される受容体としてTRP受容体が注目されており、その中でもTRPA1は比較的新しく報告されたもので、末梢における侵害性冷覚受容だけでなく神経因性疼痛や慢性疼痛などの病態時における難治性疼痛にも関与していることが指摘されている。
Mattaらの研究によると、よく麻酔薬としてよく利用されるイソフルランやデスフルラン(ともに刺激性の揮発性麻酔薬)または、静脈麻酔薬であるプロポフォールやetomidate(これらは有害性全身麻酔薬と総称される)は、TRPA1を活性化するが、非刺激性の揮発性麻酔薬であるハロセンとセボフルランではTRPA1は活性化しなかった。
また、TRPA1欠損マウスから単離した細胞では有害性全身麻酔薬に反応せず、有害性全身性麻酔薬は、無細胞のパッチクランプ法でもチャネルを活性化したことから、直接的な働きによりTRPA1を活性化していると推察された。
マウスへプロポフォールを投与したときに疼痛反応が誘発されるにはTRPA1が必須であり、また、イソフルランは神経刺激物質単独に比較して併用することでより強い腫脹を誘発した。こうしたことから、外科麻酔時に中枢神経系抑制は重要だが、TRPA1を活性化しない全身性麻酔薬を選択することで、術後の灼熱感を軽減できる可能性が考えられた。
▼【Science】Anesthesia Increases Postoperative Pain
▼【Prohealth】General anesthesia used in surgery can increase post-op pain by activating body’s chemical irritant response, Georgetown researchers discover
▼【PMID: 18574153】 Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Jun 24;105(25):8784-9.
General anesthetics activate a nociceptive ion channel to enhance pain and inflammation.
熱いことと痛いことが同じ感覚に感じられるというのは、唐辛子などを食べたときに口の中が焼けるような感覚を思い出すとよく分かる。
怪我をして炎症を起こす炎症部位は熱を持つ。熱に反応する受容体は、おそらく炎症とも深くつながりがあるだろう。 TRPA1は17度以下の冷刺激で活性化すると言われる。このことを踏まえて考えると、極寒下では感覚が低下し痛みも何も感じなくなるのは、TRPA1の過刺激状態により感覚が麻痺すると理解すればいいのだろうか?
温度刺激を感知する受容体というのは、いろいろな意味で面白い。