
腎臓に嚢胞(水がたまった袋)がたくさんできて腎臓の働きが徐々に低下していく遺伝性疾患がある。この疾患には、常染色体優性多発性嚢胞腎(Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease, ADPKD)と常染色体劣性多発性嚢胞腎(Autosomal Recessive Polycystic Kidney Disease, ARPKD)とがあるが、前者、ADPKD患者の病院としてポリシスチン1(PKD1)とポリシスチン2(PKD2)というタンパク質とその遺伝子の異常が指摘されていた。
本邦には10~20万人のADPKD患者がいるといわれるが、実際に医療機関にかかっているのは約3万人と推定されている。
今回、スタワーズ医学研究所(Stowers Institute for Medical Research)のLi Xらは、ADPKD患者の嚢胞液中にある炎症誘発性のタンパク質、TNF-αが細胞膜と一時繊毛へのPKD2の蓄積を阻害することを明らかにした。培養したマウス仔腎臓をTNFαで処理すると嚢胞が形成され、PKD2変異マウスの腎臓は嚢胞形成はさらに強まった。
また、in vivoにおいてPKD2遺伝子変異により嚢胞を生じやすくしたマウスに関節リウマチの治療に使われるTNF-α阻害剤、エタネルセプトを投与したところ、この薬剤が嚢胞の形成を阻害するのを明らかにした。
これらの結果は、TNF-αとポリシスチン、嚢胞形成を結び付ける経路があることを意味し、TNF-α阻害剤がADPKDの治療に役立つ可能性を示している。
情報源
▼PMID: 18552856 > Nat Med. 2008 Jun 15. [Epub ahead of print]
A tumor necrosis factor-alpha-mediated pathway promoting autosomal dominant polycystic kidney disease.
▼難病治療センター > 多発性嚢胞腎