[PNAS] 英語は自然の思考にあっていない?

しゃべり言葉は思考法に影響を与えるのだろうか?
シカゴ大学のGoldin-Meadow Sらは、話す言葉が違えば身振り手振りで示すコミュニケーション手段も異なるだろうと考えた。しかし、彼らが行った試験結果は予想に反したものだった。

英語を含め多くの国々では、主語の後に動詞が続くSOVの語順(たとえば、Bill eat cake)をとる。しかし、同じことを身振りで表そうとしたとき、その語順は「ビル、ケーキ、食べる」とSOV(主語、目的語、動詞)になるようだ。

博士らは、話すときに使っている文法規則は、身振りで示すときの思考回路にもつながるだろうと考え、これを確かめるため、SVO語順で話す英語、中国語、スペイン語を母国語とする被験者各10名とSOV型の言語であるトルコ語を母国語とする被験者10名、合計40名を対象に、単純な言葉を身振りで表すように指示をした。

たとえば、「少女がドアノブを回す」を身振りで表すとき、被験者はみな、母国語に関係なく主語(少女が)、目的語(ドアノブを)、動詞(回す)という順番で示した。このことは、話す時の文法規則と思考回路の順番は別のものであることを示している。

我々日本人は、普段からSOV(主語、目的語、動詞)で話しているので、この結果に違和感を持つものではないが、英語圏をはじめSVOで話す研究者らにとって、自分たちが普段話している言葉の語順と身振り手振りで示すときの表現順がことなることは意外なことだったのだろう。

言語パターンを自然な思考回路に反する語順に入れ替えた意味合いは一体何なのだろうか?

個人的には語順の入れ替えの意味について気になるところだが、研究者らは、別のことを考えている。彼らは、研究を進めていくことで言語学習に苦労する子供たち、精神障害の子供たちの理解につながる可能性があると考えているようだ。

【COMD News】The natural order of events: How speakers of different languages represent events nonverbally
【WierdVision】Roots of Language Run Deeper Than Speech
【PMID:18599445】Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Jul 1.
The natural order of events: How speakers of different languages represent events nonverbally.