[J Cogn Neurosci] 単語の切れ目を拾い出す

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こうした連続音声の中から意味ある単語を拾い出す能力として、音声の分節化が挙げられる。連続音声のどこに切れ目があるかを把握するのに必要な能力のことである。今回、理化学研究所の研究チームは、人工的に合成した単語の混じった連続音声を被験者28名に聞かせ、脳の電位を測定した結果、聴覚刺激受信後400マイクロ秒後に示されるN400と呼ばれる陰性電位が単語学習初期に大きな役割を示していることを突き止めた。

統計的学習では、テレビやラジオから流れる連続した音声を単語内の言葉は連続する確率が高く、単語間だと低いことを捉え、その語順の遷移確率から学習する。たとえば、「ぼくはドアを開ける」という言葉があったとしよう。「ぼ」のあとに「く」が来る確率は「ぼく」という単語があるので高くなる。しかし、「く」のあとに「は」がくる確率はもう少し低いものになる。なぜなら、「ぼくがドアを開ける」「ぼくもドアを開ける」など、ほかに多くの接続語が続くこともあるからだ。

英語学習者に人気の学習法のひとつにヒアリングマラソンというのがある。とにかくたくさんの英語を聞くことで英語習得につなげようという試みだ。このような学習法は統計的学習(Statistical learning)として有効なのかもしれない。

よくある英語学習サイトの宣伝で「ある日、突然英語を聞き取れたんです」なんて文句を見つけることがある。その真偽はともかく、多聴により連続音声を聞くうちに統計的学習が進む可能性はあるだろう。

今回の発見は、無数の連続音(メロディ)の中から切れ目(意味ある単語)を拾い出すときに脳神経が活動する様子(単語の塊を見つけ出す統計的学習の程度を反映する脳電位指標)を生理学的手法で観察する手段をみいだした初の研究である。

今後、統計的学習の自然なメカニズムを研究する上でも役立つ成果だと思われる。

PMID: 18211232
J Cogn Neurosci. 2008 Jun;20(6):952-64.
On-line Assessment of Statistical Learning by Event-related Potentials.
Abla D, Katahira K, Okanoya K.

ヒアリングマラソン・アーカイブ
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一時の英語学習熱はどこへやら、近頃英語音声を聞く機会がめっきり減ってしまった。統計的学習ってのがどの程度のものかは分からないが、子供が言語を学習していく過程で特に教えられるわけでもなく言葉を覚えていくのも、常日頃から大量の言語音声に接しているからなのだろう。

「意味」を知らない音声をいくら聞き続けても意味ないだろうが、無数の音声の中に「意味」を見出す努力はしておきたいものである。近頃サボっていた英語の多聴を今一度、見直そう。そんなことを考えた。