[Nature] 組織pHを絵にする方法

癌や虚血におちいった組織では組織pHが低下する。もし、組織のpHを非侵襲的に評価できれば、今までとは違うかたちで疾患検出や病態追跡を行うことができるだろう。

pH-imaging

6月12日号のNatureでは、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)が単なる脳地図作成法から脳構築を解き明かす研究法へと昇格する可能性とともに、fMRIの解釈の限界が論じられている。そして、fMRIに放射ラベルした炭酸水素イオンを組み合わせることで、これまでできなかった組織pHの非侵襲的評価が可能であることが紹介された。

哺乳動物の組織には炭酸水素イオンが存在し、二酸化炭素と相互変換することで組織のpH変化に対応する仕組みが備わっている。エインブリッジ大学(英国)のF A Gallagherらは、標識した過分極炭酸水素イオンを静脈注射し、過分極炭酸水素イオンと標識二酸化炭素のシグナル強度を比較することで組織pHを画像化しようと試みた。Gallagherらは、動的核スピン偏極と呼ばれる磁気共鳴画像法の感度を大幅に向上させる手法を利用して、わずかなシグナル強度を捉え、組織pHの画像化を可能にしたのであった。

彼らは今回の手法により、マウス腫瘍モデルにおいて腫瘍間質のpHは周辺組織よりも低いことを実証した。

Nature 453, 940-943 (12 June 2008)
Magnetic resonance imaging of pH in vivo using hyperpolarized 13C-labelled bicarbonate
▼表紙
http://www.nature.com/nature/journal/v453/n7197/covers/

今回取り上げた記事は、専門外なのでよく分からないことも多いが、組織pHを生きたまま連続的に評価可能だとすれば、今までわからなかった多くの生体現象をより深く理解するきっかけをもたらしそうに感じ、なにやらワクワクする魅力を感じたのだった。