なぜに彼は過剰なストレスを耐え忍べるのだろうか?
過酷なストレスをものともせず、ヘラヘラしていられるひとがいるかと思えば、ストレスに弱い人がいる。ストレス応答は多くの疾患のリスク因子だが、ストレスへの対処には個人差が大きい。
今回、米国国立衛星研究所のZ Zhouらは、抗不安作用がありストレスによってその放出が誘導されるニューロペプチドYの発現が、ストレス応答の個人差に関わることを見出した。ニューロペプチドYは、何か刺激を受けたときに大脳辺縁領域で豊富に発現することが知られる。
研究者らは、情動やストレス付加による脳の反応とNPYの遺伝子表現型との関係を調べ、ニューロペプチドYの発現が特性不安と逆相関することを報告した。
また、遺伝子多型の機能的な単位と考えられるハプロタイプについても検討した。ハプロタイプとは、染色体上のある部分における対立遺伝子SNPの組み合わせのことである。
研究者らの報告によると、ニューロペプチドYの発現が低いハプロタイプほど、痛みやストレスで誘導される内因性オピオイド神経伝達の活性化が活発で、ストレスに対する回復力が低いと推測された。
つまり、ニューロペプチドYは通常ストレス抑制に働いており、その発現の程度の差によってストレスに強い人と弱い人の違いを生み出している可能性が考えられる。
▼【PMID: 18385673】 Nature. 2008 Apr 24;452(7190):997-1001. Epub 2008 Apr 2.
▼【Nature 452, 997-1001 (24 April 2008) 】
Genetic variation in human NPY expression affects stress response and emotion
ストレスに対する感受性は、物事の受け止め方ひとつで大きく異なることだろう。したがって、遺伝子発現だけで全てを説明できるわけではないだろうが、なかなか面白い知見だと思う。
昨日のテレビで、片山右京(元F1レーサー)と暴走族上がりの真似をした現役プロドライバーの助手席に乗って、鈴鹿サーキットのコースを周回するのをレポートするという企画をやっていた。
人は、最初に不安を感じていると恐怖が倍増することを示していたわけだが、ストレスに対する応答も同様、ストレスを受ける前の心積もりで大きく変わってくることだろうと思う。
このことは、「不安やストレスは自分が作り出しているものである」とも言えることを意味しているのかもしれない。
そんなことを考えた。