
ヘイ、ワトソン博士。
君の全ゲノムが解読できたよ。
DNA sequencing
DNAが二重螺旋から成っていることを発見したワトソン博士の全塩基配列が決定されたようである。
それで何が分かるかって?
いや、ワトソン博士のDNAがどうこういう問題ではなく、個人の全ゲノムがたった100万ドル足らずで解読できたことがすごいのである。
しかも、今回、ベイラー大学のD A Wheelerらが行った手法では、たった2ヵ月と言う短期間で「個人のゲノム」を割り出すことができたのである。
これまでにもヒトゲノム解析で注目を集めた技術はあり、例えばCreig Venterのゲノム解読技術がその一つである。しかし、この方法はコストが膨大であった。
今回、D A Wheelerらは、二倍体ゲノムのDNA塩基配列を小さな容器中で並列に解析する手法を用いて、従来のキャピラリー電気泳動法に比較して100分の1のコストで塩基配列決定を成し遂げた。
彼らの手法ではDNAを無細胞系で増幅させるので、従来法(ランダムショットガン法:細菌でのクローン化を行う)で生じる任意のゲノム配列の喪失が避けられる。この手法で得られた結果は、従来法によって解読された個人のゲノム配列の結果とよく一致していた。
さらに、今回の手法によって、これまで見つかっていなかった新規遺伝子を含む新規のヒトDNA配列も得ることができたのである。
一塩基多型 330万個
(うち、10,654は、コード配列内に存在し、アミノ酸置換の原因となっていた。)
150万塩基対もの大きな染色体断片の獲得や喪失も同定できた。
▼【Nature 452, 872-876 (17 April 2008) 】
The complete genome of an individual by massively parallel DNA sequencing
この新技術によって個人のゲノム配列が完全に解読できたことはすごいことである。しかし、それだけではあまり面白い知見が得られたとはいえないかもしれない。
今回の新技術によって安価で迅速なDNA塩基配列決定が可能になったことは、近い将来訪れる「個別化ゲノミクス」時代の到来を一歩はやめたといえるのではなかろうか。