雪がとけ、新緑の芽生えが見られる頃、チチチチ・・・っと鳥の鳴く声が聞こえてくる。次第に日が長くなる春の季節、小鳥たちは愛を育み子孫を残すための営みをはじめる。
鳥に限らず、多くの動物が春になると生殖行動を開始する。では、彼らはどうやって春が来たことを知るのだろうか?名古屋大大学院生命農学研究科のNakaoらは、ウズラの研究からこの回答を見出し、ネイチャー3月20日号に報告を寄せた。
これまで、春になると植物に花を咲かせるホルモンについては報告されていたが、動物の季節繁殖を光周期に応じて調節する仕組みははっきりしていなかった。光修性応答の研究に適したモデルとしてよく使われるウズラでは、繁殖期以外の時期では、精巣や卵巣など生殖器を小さくして飛びやすくなっている。ところが、春になると甲状腺ホルモン活性化酵素(DIO2)の発現が急激に誘導され、生殖能力は活発になってくる。
今回、研究者らは、光によって誘導される黄体形成ホルモン分泌の開始とともにウズラの視床下部内側底部で二つの遺伝子発現が生じることを明らかにした。
第一の波は、長日条件(20時間の日照条件:すなわち春を模したモデル)にした当初から観察され、さらにその4時間後にはDIO2増加を踏む第二の波が観察された。また、短日条件(6時間の日照条件:すなわち冬を模したモデル)のウズラに甲状腺刺激ホルモンを脳室内に投与すると、性腺の成長とDIO2発現が促進され、この反応には甲状腺刺激ホルモン受容体を介したcAMPシグナル伝達が関与していることがわかった。
以上のことより、脳下垂体隆起部における甲状腺刺激ホルモンの増加は、日が長くなることによって誘導される季節繁殖の引き金になると考えられる。
▼【PMID: 18354468】Nature. 2008 Mar 20;452(7185):294-5.
Physiology: brain comes to light.
▼【PMID: 18354476】Nature. 2008 Mar 20;452(7185):317-22.
Thyrotrophin in the pars tuberalis triggers photoperiodic response.
本研究の先には、家畜の繁殖期を延ばし、生産性を向上させる夢が控えている。もし、甲状腺ホルモンを作る引き金を引く仕組みを解明することができれば、繁殖期間を人為的にながくすることだってできるというわけである。