2008年3月20号のNature表紙には、”Water under pressure”というタイトルが大きく踊っている。今、世界中で10億人を超える人々が安全な飲み水を得ることができず、20億人以上の人々が下水施設をほとんど持たない環境で生活している。また、米国政府の最近の発表では、飲料水に何十種類もの薬が含まれているのだという。
我々日本人は、水を飲めるのを当たり前と考えているが、はたして本当にこれから先も水を不自由なく飲める世の中であるのだろうか?
水危機の現状レポート ーーーー Natureの特集 ーーーー
急増する世界人口のなかで、科学的、経済的、政治的に水は安全に当たり前にのめるかどうかを今一度考え直すときがきているのかもしれない。現在の降雨量は非常に不安定な状態にあり、今後、夏期の土壌の乾燥はより一般的になるだろうと気候学者らは推測している。また、遺伝学者や農家の人々が協力して水の使用量を最小限にして最大の収穫が得られるように努力を積み重ねているが、これもなかなか難しいようである。
World Water Dayにちなんだこの特集では、水の浄化法に関する技術レポートや水の安全確保に関する話題が続く。
▼Enough water to go around?
http://www.nature.com/news/2008/080318/full/news.2008.678.html
▼WaterFacts
▼Nature 水特集
http://www.nature.com/news/specials/water/index.html
現実の水問題は水の量の不足だけでなく、質のうえでもかなり深刻であることがAP通信により報道されている。
❗ :!:米国民の飲料水には何十種類もの薬が入っている ーーーー AP通信 ーーーー
なにも「この結果」がすぐに人体への長期的リスクを意味するわけではない。
研究者はこのように言っているが、やっぱり僕には深刻に思える。
水処理施設への訪問や飲用水データベースなど通じて米国政府が行った調査結果から、米国の主要都市の飲料水に性ホルモン、抗てんかん薬、抗不安薬、精神安定薬など何十種類もの医薬品が検出されることが報告されている。
環境汚染というと産業廃棄物が頭に浮かぶが、人が服用した薬剤も汚染物質になり得るのである。人が服用した薬剤は体内で代謝され、一部は薬効発揮に利用されるが、残りはそのままの形もしくは代謝物として便や尿中に排泄される。排泄された物質は、その後、汚水処理施設で処理され、川、湖、貯水池へと流れていく。
調査によると、サンフランシスコでは性ホルモンが、南カリフォルニアでは抗てんかん薬や抗不安薬が含まれていた。こうした飲料水中の薬物は、下水処理をした後に認められたものである。
▼【Health Day】U.S. Drinking Water Contains Wide Variety of Pharmaceuticals
▼【AP通信】 AP probe finds drugs in drinking water
日本は世界的にみても、大量の薬を消費する国の一つであろう。我々日本人にとっても水危機は他人事では済まされない問題である。
微量だとはいえ、飲料水中にさまざまな薬物代謝物が混じっているというのは僕にとって衝撃的なことであった。