[Nature Medicine] 顔のない子供を救う方法

顔のない女の子の話題をはじめてみたときにはおどろいたものだが、遺伝性の頭蓋骨顔面異常であるトリーチャー・コリンズ症候群は、程度の軽いものもいれるとそこかしこに存在するようである。

トリーチャー・コリンズ症候群(Treacher-Collins syndrome)は、下顎顔面形成不全症(mandibulofacial dysostosis)とも言われ、頬骨や下顎の形成不全による小さい下顎、外側ほど下がる眼裂など、顔面骨の形成不全による特徴的な顔貌を示す。

今回、Nature Medicineの2月号にトリーチャー・コリンズ症候群のマウスモデルにおいて、p53の阻害により形成不全を予防できることが報告された。この疾患は、核小体のリン酸化タンパク質TreacleをコードするTCOF1の変異によって起こるといわれ、Tcof1の変異によって成熟リポソームの生合成が障害を受け、その結果p53シグナル伝達を介した細胞周期が止まってしまうことで神経上皮細胞が自滅(特異的アポトーシス)し、神経堤細胞の形成が阻害されると考えられている。

スタワーズ医学研究所のNatalie C Jones1らは、今回の検討によって、リボソーム生合成への影響とは別に、神経上皮細胞のp53依存性アポトーシスがこの疾患の病態発現に重要であることを示した。このことは、p53の阻害が神経堤障害症状の臨床的予防にも役立つ可能性を意味するものである。

【Nature Medicine 14, 125 – 133 (2008) 】Published online: 3 February 2008 
Prevention of the neurocristopathy Treacher Collins syndrome through inhibition of p53 function

関連
【HEAVEN】二歳になった「顔のない少女」
【firstcoastnews】Local Family Has Daughter Born Without a Face

画像診断の発達した現代において、この種の疾患を持った子供は体内にいるうちから何となく診断できるものであろう。しかし、障害をもって生まれてくることを分かりながら何も手立てを立てられないというのは非常にもどかしいものである。

今すぐ臨床に利用できるものでもないと思うが、今後の研究に期待したい。

 

Be the first to comment

Leave a Reply

Your email address will not be published.


*


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください