「それは美談か、殺人か?」
26歳のスーザンのケースはちょっと特殊である。
多くのひとが美談と受け止めているようだが、果たして本当に美談なのだろうか?羽幌病院事件のことがふと頭をよぎったが、基本的にはぜんぜん違う状況でのお話だ。彼女(スーザン)は脳死と判定された状態で妊娠7ヶ月を迎え、8月2日、体重822gの赤ちゃんを無事出産した。しかし、その翌日には生命維持装置(人工呼吸器)を外されて心臓死の状態となり死亡した。
実は、彼女、3ヶ月ほど前に悪性黒色腫が脳に転移して脳卒中を起こし、脳死と判定されていたのだが、家族がテレビで訴え、毎週数万ドルもかかる医療保険適用外の費用を集めて子供を生むために脳死のまま生かし続けられていたのである。
1979年以降、脳死状態での出産は10件以上報告されているとAP通信は米研究家(誰だろう?)による調査を紹介しているので、なにもスーザンのケースだけが特別ということではないのかもしれない。
赤ちゃんは、スーザン・アン・キャサリン・トーレスと名付けられ、元気に過ごしている模様だが、医師によると悪性黒色腫の母から生まれた子供で癌のリスクは高く、経験上、その割合は25%以上になるという。
募金サイト
▼【The Susan M. Torres Fund】
以下、ニュース元
▼【BBC】Brain-dead woman dies after birth
▼【Yahoo_AP】Brain-Dead Woman Dies After Giving Birth
▼【CNN.co.jp】5月から脳死状態の女性が出産 米バージニア州
▼【CNN.co.jp】脳死で出産の女性、死亡 生命維持装置外し
*リンク切れの記事については、リンクを解除しました。
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脳死をヒトの死と受け止めるかどうかはさまざまな議論があるので、これを本当に死後の出産といっていいかどうかはわからない。しかし、生命維持装置がないと生きていけない状態は、”死”であると思う。
スーザンの旦那さんは、「セールスマンの仕事を辞めてずっと妻に付き添って」いたそうだが、僕が実際に肉親の”脳死”を目の前にして”死”だと言い切ることができるかどうかは確信がもてない。もしかしたら、スーザンの旦那と同じ事をするのかもしれない。
羽幌病院事件では、90歳のおじいちゃんが家族の希望で人工呼吸器を装着したものの、脳死状態であるという医師の言葉があり、家族による治療中止の要請を受け、30歳の医師が人工呼吸器のスイッチを切り、後から殺人罪に問われたという。終末期医療のあり方が問われる事件だった。
参考;
▼羽幌病院事件
▼終末期医療のあり方―医療資源の効率化を!
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スーザンのケースと羽幌病院事件では、ともに医師による人工呼吸器の取り外しという点では共通している。この二つのケースを同一視するのは強引過ぎると承知している。脳死判定をどのように行ったかや患者の年齢、家族構成、延命治療の目的とその結果、得られることなど、違う点は多い。
しかし、僕の頭の中ではこの二つのケースは区別をつけられる類のものではなく、「人の命とは何なのか?」と思いをめぐらすことになる。
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ところで、このスーザンの記事に関しては、英語学習に役立てているメールマガジン「毎日1分、英字新聞」でも取り上げられていた。
その中に
Julius Caesar 「ジュリアス・シーザー」がこの方法で出産されたと伝えられることから、caesarean「帝王シーザーの切開」→「帝王切開」と呼ばれるようになりました。
とあったけれど、それって本当だろうか?以前に聞いたことがある話のような気がするのだけれど、ローマ時代にお腹を切り開いて出産ってすごくない?