[N Engl J Med] 総排泄腔外反症児の育て方をどうするか 

俺は男だ!俺を女にするよう薦めた医師はどこのどいつだ?
訴えてやる!
将来、こんな声を聞かないためにもN Engl J Medの2004年1月号に掲載された論文を知っておいて損はない。

:idea: 一昔前、遺伝的には男性なのに新生児時期の発育不全が理由で女性として育てた方が良いと言われていた疾患がある。その疾患の名は総排泄腔外反症という。
*注* ちょっと昔の報告を取り上げています。

総排泄腔外反症は、胚形成時期に骨盤全体や骨盤内組織を欠くため、重篤な陰茎発育不全や陰茎欠損を伴う稀な疾患である。陰茎発育不全に対処するには、男性としてではなく女性として育てた方が良いだろうと考えられ、実際、ジョン・ホプキンス病院ではこの25年間、この病気の男の子に対してまだ男女の意識がない新生児時期から女性として扱ってきたようだ。ところが、女性として育てられた子供たちが本当に幸せだったかどうかはわかっていなかった。

:?: 今回、ジョン・ホプキンス大学のReiner WGらは、新生児期に外科的処置により女性を模し、社会的、法律的にも女性として育てた14名の男児について、5~16歳の段階で詳細な質問票を用いて、自分自身の性別をどのように思っているかを評価した。

この試験では女性として育てた14名のほかにも2名いたが、親がわが子を女性として育てることを拒否したため、そのまま遺伝的な性別どおりに男性として育てた子供もいた。その2名は、その後も男性として生活していたのに対し、女性として育てられた14名のうち8名は調査に対して自分は男性だと回答(うち6名は、男性への性別変更を実施)したそうだ。また、2名は自分は男性だと回答しながらも、性同一性があいまいなままの生活を送っていた。

本調査によれば、調査した総排泄腔外反症児全員に男性に典型的と考えられる態度がみられ、遺伝的には男性の新生児を機械的に女性とすることは、将来の性同一性障害につながる可能性もあり、再考する必要がある。

▼PMID: 14736925
N Engl J Med. 2004 Jan 22;350(4):333-41.
Discordant sexual identity in some genetic males with cloacal exstrophy assigned to female sex at birth.

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【EP : end-point 科学に佇む心と体 Pt.1】
医者の確信という恐怖

ジョン コラピント

価格:(定価:¥ 1,890)
おすすめ度:

8-O 生まれた状態がどうであれ、勝手に決め付けられることは迷惑なものである。
良かれと思ってしたことかもしれないが、人為的に苦悩の種を作ってしまうことは避けたいものである。

関連情報の追記;

ここにも苦悩に苛まれ、立ち向かう人の活動が紹介されていた。

New York Times Magazine
What if It’s (Sort of) a Boy and (Sort of) a Girl?
あいまいな生殖器を持って生まれたブライアン・サリバンは、赤ちゃん時代の生後18ヵ月まで男の子として育った。しかし、医師の勧めで大きすぎるクリトリスは女の子らしいサイズに外科切除され、その後はBonnie(女の子)として過ごすことになる。違和感を持ちながらすごした青春時代を経て36年後、彼女はシェリル・チェイスを名乗り、Intersex Society of North America(北米インターセックス協会)で子供の性別決定をどうするかについての問題に取り組むようになる。・・・New York Timesに彼女の活動がレポートされている。