[Nat Genetics] 川崎病の関連遺伝子発見

 なぜ川崎病が起こるのか?
その原因はながらく不明のままであったが、原因究明への取っ掛かりが見つかったようである。スタンフォード大学(米国)のPopper SJらは、理化学研究所などの日米共同研究チームの成果として、川崎病の発症に関連する遺伝子が見つかったことを報告した。

:idea: 川崎病は乳幼児を中心とした疾患で、発熱や発疹などの症状が出た後、時に心臓に冠動脈瘤が出来て重症化する場合がある。詳細は不明であるものの、過剰な免疫反応が起こっていると考えられてきた。

:?: 今回、日本における川崎病の患者637名と健康な被験者1034名について、その遺伝子を調べた結果、ITPKC(inositol 1,4,5-trisphosphate 3-kinase C)と呼ばれる遺伝子の塩基配列に機能的な多型が存在することがわかった。

ITPKCの遺伝子多型の一つであるitpkc_3のCアレルは、ITPKCmRNAのスプライシング効果を減弱させた。

ITPKCによって作られるタンパク質は、T細胞の活性を抑えるとみられており、川崎病の患者で免疫が過剰に反応することとITPKCの遺伝子多型は、何らかの関連があると思われる。

また、本研究結果は、血管炎の病因にT細胞の活性化が重要な役割を演じていることを強く伺わせるものである。

【Nature Genetics】 Published online: 16 December 2007 
ITPKC functional polymorphism associated with Kawasaki disease susceptibility and formation of coronary artery aneurysms
▼【PMID: 18067656】Genome Biol. 2007 Dec 7;8(12):R261 [Epub ahead of print]
Gene-expression patterns reveal underlying biological processes in Kawasaki
disease.

SNPs (一塩基多型)には多くのタイプがあり、itpkc_3は、多くある多型の一つである。西洋人に比較して日本人では10~20倍も川崎病の罹患率が高いことからも、この病気の発症に遺伝要因が関係すると推測されていた。また、川崎病にかかった兄弟姉妹がいる場合も、罹患率は高いことも知られている。

米国人での検討結果を上述しなかったが、本論文では米国人での検討も行っている。
itpkc_3のSNPsを持っている場合2.13倍リスクが高く、日本人の場合は1.89倍のリスクであった。日本人で最もリスクが高いSNPsだったのは、snrpa_11で、このSNPsがあると、2.05倍リスクが高いという結果になっていた。

話は変わるが、川崎病の発症には流行があるようで、娘が川崎病で入院したときに、この1週間で続けざまに川崎病の患者がやってきたと医師が言っていたのを思い出す。本当に流行があるのかどうかは知らないが、その後も別の病院で同じようなことを言っている医師と出会うことがあった。

原因遺伝子が見つかったことで、川崎病発症の原因究明に一歩近づいたのかもしれないが、一つの遺伝子があるから即、発症しやすい、もしくは重症化しやすいということでなく、何らかの環境要因によって引き金が引かれるからこそ、発病に至るのであろう。