[Arthritis & Rheumatism] 指の長さで膝変形性関節症のリスクがわかる

「ちょっと手を見せてくれますか?」
ある日、あるとき、膝の治療を希望している老婆に対してなにやら熱心に手の指のレントゲン像を測っている博士の姿があった。膝の治療を受けに来ていた老婆は、博士の行動に戸惑いを隠せず、思わず「あの~、先生。わたしが見てもらいたいのは膝なんですけど・・・」と問いかける。

:idea:笑みを浮かべて顔を上げる博士。
彼は、自説を確かめるため2000名近くの患者の指の長さを調べ、「やっぱりそうだ」とつぶやき、「薬指が人差し指よりも長い女性は、膝の変形性関節症になりやすいんですよ」と説明を始めるのであった。

妄想はさておき、知の冒険では過去に指の長さが○○のリスクに関係するという話題を取り上げたことがある。これまでの研究で男性は人差し指よりも薬指のほうが長いことが多く、女は差が無い傾向にあるといわれていた。このような男女差は、胎児期に浴びたテストステロンの影響だとされ、これまでに、人差し指が薬指よりも短い人は胎児期のテストステロン暴露が多く、男性では精子数もおおいことが明らかにされている。

:?:今回、ノッティンガム大学(英国)の研究グループは、変形性膝関節症の症状もしくは既往歴のない1,123名を対照として、市内の病院から得た2,049 名の変形性関節症の患者データを分析した。

博士らは、手のレントゲン写真から指関節の基部から頂部および中手骨の長さを調べ、人差し指が薬指より長いものをタイプ1、長さが同じものをタイプ2、人差し指より薬指が長いものをタイプ3と分類し、膝や骨盤のレントゲン写真結果と照合していった。

その結果、薬指が長いタイプ3パターンを示す人は、変形性膝関節症のリスクが高く、そのリスクは女性に限ると3.05倍、男性では1.45倍と、男性よりも女性で顕著な関連を認めることが確認された。また、薬指に対する人差し指の差の比(2D/4D値)が小さいほど、膝関節炎のリスクは高く、この関係は年齢や性別、生活様式など他の因子を考慮してもなお認められた。

【Health Day】Fingers Point to Risk for Arthritic Knees
【PMID: 18163515】Arthritis Rheum. 2008 Jan;58(1):137-44.
Index to ring finger length ratio and the risk of osteoarthritis.

本論分の考察には、指の長さの比と関節炎との関連をはじめて報告した成績であると記されている。今回は、わかりやすくするため抄録にしたがって膝関節炎だけを取り上げたが、実際には変形性股関節症995名についても検討しており、こちらは指の長さの比との関連を認めなかったが、指関節炎と組み合わせて分析すると関連を認めたと報告している。

同僚にこの論文の話をすると、まゆつばもの扱いで「指の長さでそんなことがわかるわけない」といわれてしまった。しかし、著者らはまじめであるし、個人的には指の長さと関連があるのもあながち嘘ではなかろうと思っている。

論文をきっかけに、あらためて指の長さを見比べてみると、みんなそれぞれに指の長さがまちまちであることがわかっておもしろい。